先月中旬に家内の実家に赴き、家内と共に冷たい隙間風が吹き込む推定体感温度マイナス二桁の納屋で薪を積み上げる作業をしてきました(写真参照)。大きな農家に今年85才になる義母が一人住まいで、力仕事はできませんので助けが必要な場合は隣人や家内とその姉妹家族が義母を訪れていろいろと手伝っています。

実家は片田舎にありまして、拙宅からクルマで30分ちょっと。100年前に建てられた農家で外観にも内部にもそれなりの趣があります。寒さが厳しく、暖をとろうと思えば薪を暖炉にくべることになります。ドイツの一般家庭では暖房はふつうガスか石油で、暖かさを調節ができますが、薪暖炉というのは強烈な熱を生じまして調整は不可で、タイル張りの暖炉は触れると火傷をするほどです。実家では居間に大きな暖炉がありますが、台所でもレンジの主な熱源は薪で居間以上に暖かく、薪でとる暖というのはとにかく眠くなるので困ることがよくあります。
実家は近くの森の一部を所有していまして、そこにある木を隣人の樵に伐採を依頼し、納屋に運んでもらって暖炉にくべることができるぐらいの大きさに切断してもらいます。そして樵が山と積んだ薪を手押し車で所定の位置まで運ぶのが小生の役割で、薪を乾燥させるために所定の位置に積み上げるのが家内の役割と、仕事を分担しました。実家の森からの薪はトウヒが多く軟材ですので発熱量が低く、硬材(例えばブナ)も必要ですのでこれらは村人から大きな木を買い、隣人に適当な大きさに切断してもらっています。軟材はふつう針葉樹で成長が早く薪は手に取ると軽めですが、硬材は成長が遅く薪は軟材の物に比べてずっしり重く発熱量が高い、つまり暖炉が長い間熱いわけです。そして台所で手っ取り早く熱が必要な場合は軟材を用いることになります。針葉樹、広葉樹というのは小学校で教わりましたが、軟材や硬材そして発熱量といった田舎における実生活に密着した事柄をはっきり把握したことがなく、恥ずかしい思いをしました。
半分ほど仕事が片付いて一息ついていましたら、突然義母の飼い猫が小生の脚に体を擦り寄せてきました。どちらかというと猫が苦手な小生のところへいきなり出てきて鳴きながら擦り寄ってくるというのはどういうことなのだろうと訝っていましたら、薪を積み上げていた家内が『何もせずにボサッと立ってるんなら私のことを構ってよ。撫でてくれてもいいじゃない』と言ってるんだよと小生の心中を見透かしたようにおせっかいな解説。家内が猫語を理解するとはついぞ知りませんでした。癪にさわりましたので「ボサッと立っていたんじゃない。しばし瞑想に耽っていたのだ」と反論しましたら、「猫にとっては人間が瞑想するのもボサッとするのも同じことなの!」と見事に切り返されました。写真は件の猫で推定年齢13歳。猫を撫でているのはすべての猫を満遍なく溺愛する家内の妹です。
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薪の積み上げ作業は家内と二人がかりでおよそ4時間かかりました。薪は今冬足りるであろうという予測ですが、なんせドイツは一年のうちおよそ半分が冬ですので4月までもつか甚だ疑問です。