先月中旬の寒波の際、拙宅の玄関の扉のガラスに見事な氷花が出現しました。
日本で氷花と言えば、樹や草に水分が凍って白い花のように見えることですが、ドイツでいう氷花(Eis氷+blume花)は少し違いまして、ガラス窓に咲きます。単純に言えばガラスに付着した霧氷の特殊な形なのですが、これがそうしばしば花あるいは葉っぱに見えなくもないのです。出現の条件は①ガラス板が薄いこと②外界の気温が0℃以下に下がること③屋内(つまり拙宅の場合は玄関)の湿度が適度に高いこと④ガラス窓の熱遮断効果が低いこと⑤窓ガラスに埃の粒子などがあること、となっています。この①の条件が問題でして、家を新しく建てる場合や古い家を改修する場合、現在ではほとんどの窓にガラスが2枚使用されており、たとえ②~⑤までの条件が満たされていても氷花は見られません。小生が住んでいる借家は築60年という古い家ですが、数年前に大幅に改修された関係で居間、台所、書斎などには二重ガラスの窓が入っています。ところが玄関の扉はどういうわけか取り替えられず、そこにはめ込まれているガラスが昔のままの薄いガラスなのです。これはラッキーでした。新しい扉と取り替えられていたら氷花は見られなかったはずです。なお写真の氷花が出現したときの外の気温がマイナス14℃、玄関の扉の内側がプラス1℃で湿度は70%でした。
で、この氷花をじっと観察していて、ふとシューベルトの歌曲集「冬の旅」にでてくる氷花を思い出しました。歌曲集の真ん中あたりに「春の夢」という曲があり、その中の一節に『しかしいったい誰が窓ガラスに葉っぱを描いたのだろう? 冬に花を見た男を君たちは夢見る男とあざけり笑うのだろう』というのがあります。以前は「子供がよくやるように誰かが曇った窓ガラスに指で描いたんだろう…」ぐらいにしか考えてなかったのですが大きな勘違いでした。この詩のなかの葉っぱや花というのは氷花のことなんですよね。誰かが描いたのではなく、自然が描いたのです。氷花はガラスの外側からでも内側からでも見ることができます。添付の写真は外側から撮りました。そして条件が少し変わるだけで氷花も変化したり消えたりします。この「はかなさ」がこの歌曲集のモチーフの一つです。こういう発見は新築の家ではできなかったでしょうね。
ドイツの冬は長いです。マイナス20℃という凍てつく夜空に冷たく輝く月光に突き刺さるような視線を感じました。月を反射する地面の凍った雪には厳しさはなく、あるのは静けさだけです。氷花と相俟って、これが冬の長いドイツの雪月花だと言いたい気もします。ドイツの冬には風情があって小生は好きです。








