あけましておめでとうございます。
今年の干支が『巳』ということで、蛇について書いてみたいと思います。
大昔、遠距離恋愛を余儀なくされて時(ウィーン⇔グラーツ間、約300km)、今のようにメールなどという便利なものはなく、三日と空けず文通をしていました。封筒の裏にいちいち差出人を書くのが面倒だということで、小生は当時音楽で糊口を凌いでおりましたのでト音記号を記し始めますと、医学生の相手は、棒に絡まる蛇を描いてきました。 「ふうん、ドイツでは医学のイラストは蛇なのかな」と妙に感心したことがありましたが、それ以上詮索することはありませんでした。が、十数年経ってからドイツの製薬会社に就職するすることになり、その会社のロゴマークが、またもや「棒に絡まる蛇」でしたので、入社早々医学と蛇の関連を調べたことがありました。
もう30年も前のことで、どのようなことを調べたのか、記憶が定かではありませんが、蛇の絡む棒は西洋ではアスクレピオスの杖と呼ばれ、アスクレピウスはギリシャ神話の医術の神である…蛇は彼に薬草の力を伝授し、アスクレピウスは死者をも生き返らせることができるようになるのですが、ゼウスの反感を買い、殺されてしまう…といった内容だったと思います。そもそも蛇というのは、古代エジプトのウロボロスという、蛇が自分の尾を飲みこむ図像にありますように、自らを飲みこんで自らを産むということから、死から生への推移、つまり蛇は再生、ひいては不死を顕現しているとみなされ、崇められていました。
しかし聖書では、楽園でエヴァに禁断の実を食べることを唆した蛇は悪役とされていて、その罪で足がなくなってしまったということになっています。聖書における『狡猾』、神話における『不死』というのがヨーロッパ人の受ける蛇の印象でしょう。
ひるがえって日本ですが、信仰では霊能者の出入りが多い三輪神社の白蛇が著名です。神の使いということで崇められているのですが、蛇=狡猾というイメージは日本ではないように思えます。「蛇というのは獲物を襲う時に音を立てずに忍び寄り、林なんかでは這った跡形を残さないから、油断がならない→狡猾って思えるんじゃないかな」と家内はいうのですが、どうも狡猾のクオリティが違います。しかし蛇が薬品の原料になりうるという点では日本でもヨーロッパでも同じです。日本ではマムシは滋養強壮剤として著名ですし、ホメオパシーでは蛇の毒はレメディの重要な原料です。
ドイツで一番多い蛇はRingelnatterというヤマカガシの一種ですが毒性はありません(和名不詳:日本には、いないからでしょう)。川、湖、沼などの水際に生息しますが、小生はまだ出くわしたことがありません。巳年生まれの家内が持っているアルコール漬けの若いRingelnatter を見るだけです。この蛇は彼女が勤務している会社の横を流れる川で、同僚の生物学者がみつけて捕まえ標本化したものです(蛇足ながら標本の写真を添付しておきます)。蛇に恐怖心を抱いているのに、大事そうに持っているというのは、どうも腑に落ちません。聞きましたら、蛇に興味とリスペクトがあるもののめったに見られないし、標本化されていると細部にわたって蛇の見事さを認識することができるから、とのことです。「巳年生まれだから」という返事を予想していたのですが、よく考えたら干支はドイツにはありません。巳年生まれの個性を説明させられる羽目になりました。








