ドイツの春は日本より一カ月遅れでやってきます。ドイツの詩人が「おお麗しの五月…」などとよく記しているのは春を指しているわけでして、日本の「風薫る五月…」とは趣が異なります。もう少し詳しく述べますと、毎年5月20日前後にアイスハイリゲ(Eisheilige⇒直訳すればEisが「氷」、ハイリゲが「聖人たち」ですので『氷の聖人たち』となります)と呼ばれる日々があり、数日間冷え込む日が続きます。今年のアイスハイリゲは当地の日中気温が10℃前後でした。その後20℃前後の気温となり拙宅の庭にも春の兆しが如実に見て取れるようになりましたので、そのいくつかをご紹介いたします。
まず針鼠ですが昨年夏の穴熊騒動がありましたので、冬眠を終えた後にまた出てくるかな…と思っていましたら果たして出てきました。去年の秋に家内が作った迷路のような餌置き場(およそ60cmX60cm、ものの本にそのような餌置き場がよいと紹介されていたとか)に戸惑うこともなく、針が明るい茶色の大きなのと(体長約25cm)暗い茶色の小さなのが(体長約15cm)毎晩登場。しかしこの餌置き場は日中は階下の住人の雄猫(4歳)が出入りしているとの報告があり、「まさか…」と思わずつぶやきましたら、証拠の写真を見せられて絶句。家内が10cmと記されていた入り口の幅をいい加減な目測で大きくし過ぎたのがその原因です(向かって右側の入口)。猫に餌を横取りされる可能性もありますので家内は夕闇が迫ってから餌を置いているのですが、餌を置いて間もなく針鼠が登場して、ムシャムシャと音を立てて餌を喰っていますので、猫によるデメリットはいまのところないようです。

次はイモリです。直径、水深ともに60cmの小さな池の水草にイモリが卵を産み付けたのを家内が目ざとく見つけ、透明な容器に水草ごと移して観察開始。数日して長さ1cmぐらいの小魚のようなのが数匹出現。イモリが孵化したのかどうかは判明しませんが数週間たてば形態がはっきりしてくるでしょう。ある程度の大きさになれば家内は池に戻す意向のようですがイモリは6月になれば池を出て陸上で生息するでしょうし、そうなればもう見ることもなくなり、針鼠のように晩秋まで毎晩出没するということはありませんのでイモリは拙宅の春の風物詩です。
哺乳類(針鼠)、両生類(イモリ)に続きますのは昆虫です。マルハナバチ(丸花蜂)というミツバチの一種なのですが、ミツバチよりもずんぐりしていて長毛が密生しています。あまり見かけることはないのですが、庭の椅子にすわってまどろんでいましたら飛来しました。家内が「マルハナバチは急激に数が減っていて、動物愛護協会の保護動物リストに載ってるぐらいだ。うちに飛来するということは、何かしてやらなくてはいけないということだ」と言い出して、即ガーデンセンターで写真のようなマルハナバチ用の巣箱を購入(横幅30cm)。注釈書には地面に煉瓦を置いてその上に巣箱を置くとよいとあります。それだけならまだいいのですが、朝日が当ったあとはずっと日陰になるようなところを探すように、そして巣箱は決して強い直射日光に晒してはならない(つまり東以外の方角は不可と解釈できます)…内部には藁や毛糸などを入れてやること…などと注文がついています。なんとか条件を満たしましたが、はたしてマルハナバチがこの巣箱に住みつくのかどうか甚だ疑問です。とりあえず様子をみることにします。

動物3種のあとは植物です。種を蒔いて3日目にキャベツが芽を出し始め、一週間ほどで写真のように成長しました。『お好み焼き』を自宅で作りたいとかねてから思っているのですが、お好み焼きにキャベツは欠かせません。しかしドイツのキャベツというのは「ごわごわ」でいくら細く切ってもお好み焼きのキャベツとしては使いものにならず、ゆがいてみたら今度は水っぽくなりすぎてどうしようもありません。先月四国の片田舎に行った際、小間物屋の店先にキャベツの種子が置いてあるのを発見。「これだ!」とばかりに買いこんで、まずは鉢植えをしたという次第です。もう少し大きくなれば庭に移植して、うまくいけば秋に収穫できるかなと淡い期待を持ち始めているのですが、家内は「喜ぶのはまだ早い。夏場ナメクジが出回れば一晩でキャベツが全部喰い荒されてしまう恐れが大きい」と悲観的です。四季取りキャベツとありますので、ナメクジに総ナメにされるようでしたら秋に再度種まきをしようと考えています。