あけましておめでとうございます。
本年も駄文コラムを引き続きお読みくださいますようお願い申し上げます。
昨年11月にドイツのオークションでヒトラーの水彩画が競売にかけられました。「ヒトラーって絵を描けたの?」と疑問に思われるかもしれませんが、ヒトラーはまだ無名の頃、画家志望で、ミュンヘンの著名な建物の絵葉書を手本に水彩画を描いて糊口を凌いでいました。1905年から1920年の間に描いた絵は2000枚ほどあったようです。
そのうちの一枚がオークションにかけられたわけですが、もとより信憑性は高くはなく、4500ユーロ(約65万円)からスタートしました。信憑性は高くなくても世界各国の関心は高く、10倍の値で落札される可能性があるという下馬評でしたが、いざフタを開けてみると、なんと13万ユーロ(約1900万円)で落札され世間をアッと驚かせました。大金を投じたのは中近東の人だということですが詳細は明らかにされていません。「芸術的価値ゼロのあんな絵なんか、絵葉書を模写しただけだ。ヒトラーのものかどうかわかったもんじゃない。あんな絵はどこの古美術屋でも見かけることができる」とバッサリ言い切るする専門家もありました。
ヒトラーの水彩画と同様に意外なのがニーチェの作曲です。ニーチェは自分の作品を当時の名指揮者フォン・ビューローにこっぴどく酷評されて作曲を断念してしまいました。稀代の哲学者ニーチェが果たしてどのような曲を作ったのか興味がありましたのでYouTubeで聴いてみましたが、やはり大した作品ではありませんでした。CDはさすがに市販されていないようですが、学術的な研究の資料にならないのかと思います。
ヒトラーとニーチェの芸術作品が素人芸の領域を出ないのとは一線を画しているのがドイツのロマン派の作曲家メンデルスゾーンとウィーンの十二音音楽の旗手シェーンベルクの絵画で、いづれも玄人はだしです。メンデルスゾーンの絵はライピツィヒのメンデルスゾーン・ハウスに展示されています。行方不明になっていたメンデルスゾーンのコモ湖の風景画がライプツィヒに戻ってきたというニュースが昨年2月に大きく報道されましたが、絵の価格に関する質問には担当者の回答はありませんでした。競売にかけられることはあり得ませんので、絵の値段など下種の勘繰りといったところです。なおメンデルスゾーンには演奏会用序曲「フィンガルの洞窟」という名曲があり、スコットランドに旅行した際に訪れたスタッファ島の洞窟に感銘を受けて作曲したものですが、この曲を聴いてワーグナー(だったと思います)が「メンデルスゾーンは一流の風景画家だ」と称えています。たしかにビオラ、チェロ、ファゴットが奏でる主題は海の波の動きを繊細に表現していて、おのずから洞窟の光景が目に浮かぶようになっています。水彩画そのもだけではなく、水彩画のような曲も作曲できるというのはメンデルスゾーンの天賦の画才がなすところです。
もうひとりのシェーンベルクは「自画像」がつとに有名ですが、作品はカンディンスキーに称賛されたほどですので、非凡であることは間違いありません。ウィーンにはシェーンベルクセンターがあり、ゆかりの品が展示されているようですので、次回ウィーンに行った際に訪れてみるつもりです。
追記:年末年始三日間にわたって雪が降り、しぶとく残った ワイルドローズの赤い実が白い雪に映えて風情がありました。








