家内の甥っ子の一人が高校の美術の授業の学期末作品に粘板岩を用いた作品を提出するつもりらしく、年末に粘板岩を安く入手する方法について家内に助言を求めてきました。
粘板岩といいますのは皆様方にはあまりなじみのない岩石だと思いますが、百科事典を見ますと、『泥岩や頁岩(けつがん)が弱い変成作用を受けて、板状にはがれやすくなった岩石で屋根材(スレート)、敷石、張石としての利用は外国では珍しくないが日本ではまれ』とあります。たしかにドイツでも粘板岩がよく産出する地方ではこの粘板岩の屋根をしばしば見かけます。
で、拙宅からクルマで1時間ぐらいのところに、世界的に有名なホルツマーデン(Holzmaden)というジュラ紀の化石が多く発掘されている小さな村があり、そこの粘板岩採石場では家族そろって、つまり大人から子供まで化石探しを安価で楽しむことができるということを家内が思い出しました。「思い立ったが吉日」とばかり出かけたのはいいのですが、冬季閉鎖中。ホームページには閉鎖中という記述はなく、採石場の向かいにある博物館の受付で聞いても埒があきません。事情を説明して「化石でなくても粘板岩でさえあればいいのだが…」と訴えますと、「今日は専門家が粘板岩をチェックしているので、不要なものがあるかもしれない」と言いながら博物館の奥へ入っていきました。
受付の方が戻ってくる間、入口の横にある巨大な化石を家内がしばらく凝視してから、「大きな爬虫類の足の細かい部分まで見事に修復されている。すばらしい!私、こういう仕事がしたかったんだ」と言い出したのには耳を疑いました。家内は自他ともに認める胆汁質で、太古の爬虫類や魚介の化石の修復などという気の遠くなるような根気を要する仕事は粘液質タイプに向いた仕事です。およそ胆汁質タイプには不向きですので念のため「化石を修復するんじゃなくて、化石を探す方じゃないの?その方がキミに向いているんじゃない?」と聞きましたら、「違う!化石を修復する方なんだ。私、長い間時間をかけて化石を修復する根気と緻密さを十分持ち合わせているんだ。」と、なんだかもう化石に取り付かれたような表情を浮かべます。小生(自他ともに認める多血質です)なら絶対に化石を探す方が性に合っています。20年ほど前、エジプトの砂漠に出かけた時、古代人の土器や鉱物化した植物を根気よく探し歩いていたほどです。それにしても家内と寝食を共にし始めて10年近く経つというのに、彼女の理想の職業が化石の修復師とは全く気づきませんでした。これから先、小生がまだ知らない家内の側面が次々と明らかになりそうです…
そうこうするうちに受付の女性が粘板岩をどこかから持ち運んできました。一部にはアンモナイトが見られ10kgほどの粘板岩(写真参照)を無料でくれるとのことでしたので、ありがたく受け取り、受付の横に設置されている募金箱に10ユーロ(約1300円)を寄付して思いがけない収穫を喜びながら帰宅しました。
数日後、くだんの甥っ子が拙宅に現れましたので、手ぐすねを引いて待ち構えていた家内が得意満面に粘板岩を示し、彫刻に心得があるものですからノミやヤスリの使い方を伝授したのですが、予想以上に面倒な仕事だと理解した甥っ子は「ウーム、難しそうなので粘板岩ではなく合板で作ることにする」と予想だにしなかった方向転換!がっかりした家内の表情をお見せしたかったです。








