いままで随分いろんな方々とお会いしてきました。文字通り一期一会で、たった一度しか会わなかったのに、強く印象に残っていて、時が経つとともにその一会の重要さがひしひしと感じられる方にクーデンホーフという方がいます。
小生がオーストリアに留学し、最初の一年を過ごした街がグラーツというところで、友人のエーリヒが日本語を勉強していました。
当時の小生はドイツ語がまったくできず(オーストリアは中立国だ。ヨーロッパの中立国ではすべからく英語でOKという友人の無責任なアドバイスを真に受けてしまいましたので ‥‥‥)、エーリヒに頼るところが多かったのですが、「日本語の先生がぜひ本物の日本人の発音をきかせてもらいたいといっている」と乞われるままに、その先生の授業に出てみました。
場所はグラーツ大学の講義室で時間はたしか夜7時頃だったと思います。生徒は5人でみんな若くジャンパーなどラフな格好で授業を聞いているのですが、先生は見事にきまったダブルの上下で、大柄で恰幅があり、70歳ぐらいの老紳士と見受けました。
外国人用国語読本を1ページ読み上げたら、先生が「すばらしい発音でございますわね。なんて流暢なんでございましょう。みなさん、よろしゅうございましたわねぇ」と完璧な古きよき時代の女性言葉で褒めてくれたのには仰天。
エーリヒが「クーデンホーフ先生はお父さんがオーストリアの外交官でお母さんが日本人だったんだ」と言っていたことを思い出し納得しましたが当時の小生には残念ながらこの人物の偉大さを知る由もなかったのが悔やまれてなりません。
どうやらこの方のお母さんというのが青山みつのようで、ご本人はひょっとして1920年代からヨーロッパ統合運動を展開していた、すなわち今日のヨーロッパ共同体(EC)の基礎を築いた人物かもしれないと知ったときにはあいた口がふさがりませんでした。
このような方がいったいなぜグラーツにいたのか、はたして本当にあの著名なクーデンホーフ氏だったのか(兄弟かもしれません)、また以前NHKのドラマの主人公になったとかいうクーデンホーフ みつこという女性と上記の青山みつとは関わりがあったのか、確かめることができずにいますが、クーデンホーフ氏の分厚い手の柔らかな握手はいまでもはっきりと思い出せます。








