2020年2月用コラム 地元産 スーパーや朝市で「地元産(aus der Region)」と記された野菜や果物が出回るようになって久しいのですが、かなりのブームとなっております。ある統計では「野菜や果物を購入する際、地元産かどうかは重要か?」という問いを1000人に出したら78%が「重要だ」と答えたということで、ブームが証明されています。かくいう小生も地元産と聞いたときは漠然と「自分が住んでいる村から大体半径20~30km以内のところで採れた農産物」と勝手に解釈しておりましたので、地元産ははたして実際に地元産なのか?地元産のメリットは何か?を調べてみました。
まず最初に見つけたのは「地元産という表示には法律的な定義がない」という一文です。つまり地元産とは自分が生活しているところの農産物と考えていいのですが、その範囲が村、市、県、州とそれぞれの事情で解釈が大幅に違うということになります。定義がないことをいいことに、スーパー大手のマーケティング戦略担当者は毎回勝手な見解を考え出し、およそ地元産とは思えないようなものを地元産として市場に送り出して売り上げの増加を狙います。数百km離れた牧場から運搬されたミルクを同じ州からのミルクということで「地元産のミルク」と表示したり、隣国からの苺の種や草をドイツに持ち込んで育てて結実させて「地元産の苺」としたり、マッシュルームは移動可能な苗床で育てられ、収穫する直前に「地元」に持ち込まれて、「地元産のマッシュルーム」とするといった例がレポートに記されています。しかしすべての地元産の農産物がグリーンウオッシングされているわけではなく、特に朝市では近郊からの農産物の栽培地が明確に記されているケースが多いです。
もうひとつの問題点は「地元産=オーガニック」と誤って思い込んでいる人が多いことです。その理由として「地元産は直送だから運送距離が短くて新鮮」、「CO2の排気ガスの影響が少ない」、「エネルギーの節約になる」などが挙げられ、納得している人が多いのもうなづけるのですが、地元産イコールオーガニックではありません。無添加無農薬とは限らないのです。オーガニックのラベルを取得するには高いハードルをクリアしなければならないと認識している人は意外と少ないです。とはいえ、無添加無農薬の農作物を栽培しながらも、書類手続きや申請が面倒で、そしてそれに伴う費用が重なってオーガニックの認証を諦める農家もあります。こういった農家をクチコミで見つけてサポートできればいいのですが・・・
そういえば昔、長男が小学生の時に住んでいた村では、乳牛を飼っている農家があり、一日おきに2リットルの搾りたてのミルクを分けてもらっていましたが味は抜群でした。卵は家内の実家で母親がにわとりを飼っていて、行くたびに産みたての卵を貰ってきて、卵の新鮮さがさほど重要でないクッキーには使わず、新鮮さがモノをいう目玉焼きを作る際に使用していました。そして数年前まではけっこう土が付着しているジャガイモを積み込んだ軽トラが家の近くにやってきて10分ほど駐車し近郊にある自分の畑で栽培したジャガイモを販売していました。時が流れ、乳牛の農家は廃業してしまい、家内の母親は高齢でにわとりの面倒を見ることができなくなり、軽トラのジャガイモはいつの間にか来なくなって、オーガニックではないものの確実に地元産のミルク、鶏卵、ジャガイモを口にすることが不可能となって久しいです。いきおい朝市やスーパーに出かけることになりますが、家内は地元産よりオーガニックな農産物を優先し、小生はどちらかというと地元産を優先したいと考えていますので、たまに二人で朝市やスーパーに出向くと時折面倒なことになります。
先だって家内がカボチャをスーパーで買ってきました。「画期的なカボチャだ」と嬉しそうに言いますので、「どんなカボチャだ?」と訝りながら見ましたら写真左のカボチャでした。一見何の変哲もないカボチャで「どこが画期的なんだ?」と訊きましたら「ちゃんとよく見ればわかるよ」との返事。手に取っても上からの視線で見ていましたので胴体の部分にBIO-Organicと記されているのを見落としていました。どうやって刻印したのか不思議です。ふつうはオーガニックのシールや価格ラベル(購入者が貼り付けます)が貼られていますがシールは剥がすのが厄介で(特殊接着剤塗布?)、価格ラベルは逆に剝がれやすく、レジで困ることがあります(写真右)。家内が画期的だというのも頷けますが、この刻印が普及するかどうか疑問です。
