あけましておめでとうございます。本年も引き続きこの駄文コラムをお読みくださるようお願い申し上げます。昨年、このコラムの愛読者(!)が数人おいでになるという驚くべき事実をはからずも確認し、大きな衝撃を受けたとともに、改めてよい駄文を記す義務感にさいなまれることになりました。が、いっこうに気にせず臆せず屈せずにパソコンを叩いていく所存ですので、どうかご安心ください。
年頭のご挨拶に続きまして本文に入ります。「文学の話を続けろ」というコメントがありましたので、今回はドイツにおける日本の小説について書くことにします。
先だってのコラムにドイツ人愛読書トップテンをご紹介しましたが、100位までのなかに残念ながら日本文学を見出すことはできませんでした。ミシマ、カワバタは当地でも比較的著名ですので少し意外だったのですが、25万人対象とはいえ3分の2が女性だったということを後で知り、このことがひょっとして影響していたのかもしれないと思っています。現在、ドイツで一番著名な日本人作家といえば、やはり村上春樹でしょう。以前からドイツの自称、他称、似非の各種知識人から評価されていましたが、一躍話題にあがったのは、4年ほど前にテレビの文芸評論番組で「国境の南、太陽の西」が紹介されてからです。この番組は「文学カルテット」といい、ドイツ文芸批評壇の長老、マルセル ライヒ=ラニツキが座長となってゲストを含めた4人で歯に衣着せぬ文芸評論を中継して長い間人気番組だったのですが、「国境の南、太陽の西」の中のある露骨な表現が紅一点の女性のレギュラーメンバーの顰蹙を買い、エロの表現をめぐって座長とこの女性の大喧嘩となり、この番組の解散の導火線となってしまいました。しかしこれがかえって一般読者の興味を惹くこととなり、村上春樹の知名度が飛躍的に高くなったというわけです。
吉本ばななの「キッチン」も当地の若い読者に好評でしたが、この本を読んだとき、はたしてどれぐらいドイツ人に理解されたのか疑問に思いました。といいますのは日本におけるごく庶民的な住まいというものが肌で感じとっていないのなら、この小説の魅力は半減してしまいます。また後半に牛丼だったか何だったか忘れましたが、主人公が友人に「お持ち帰り可能」な、いかにも日本的な食べ物を差し入れするという場面がありました。この食べ物がスパゲティとかピザだったら幻滅で、いいかえればこの食べ物が日本人の情緒にいかにしみこんでいるかということがわかってないと困ります。かといってこちらの人間に口でうまく説明することなどできっこないわけで、このあたりがどうもむずかしい。「日本人の深層心理における和食の重要性」といったようなテーマを大上段に構えて、牛丼、ラーメン、カレーライスなどといった日本人に欠かせないポピュラーな食べ物を十種類ぐらい挙げて外人用に分かりやすく、しかもツボを押さえた解説書みたいなものが必要なんじゃないかと思います。どなたか比較人類学の専門家がやってくれないでしょうか?
住まいとか、食べ物とかよりもっと難解なのは「こころ」でしょう。そのものずばりの小説が漱石にあります。以前、自称「日本通」を公言して憚らない女性にこの本を買い与えましたら、半分も読まないうちに「暗すぎる。陰惨だ。」とギブアップしてしまいました。「それみろ、わかってたまるか!」とほくそえんだのはいいのですが、反面「やっぱりね…」とがっかりしたことを覚えています。
翻って日本における外国文学というのはどうなのでしょうか?紙面がなくなりました。以下次号といたします。








