残暑がまたまだ厳しい日本かと存じますので、最近の当地のトピックスから「涼」と「慄」の趣のある、二つのニュースについてご報告いたします。
まず「涼」ですが、ウィーンのレオポルド美術館において『裸の真実』というテーマで、クリムト、シーレ、ココシュカなどオーストリアを代表する20世紀の画家の裸体画を展示した催しが8月中旬までありました。気温が30℃を越えたある日、館長が「裸の、あるいは水着の来客は入場無料」と発表しますと、開館1時間で100人以上が押しかけ、半数が裸体もしくは水着姿だったようです。美術館側は、入場者に温度調節されている美術館内で「涼」をとってもらうことと、当時スキャンダラスな画家であったクリムトやシーレにあやかって「ミニ=スキャンダル」を演出することの一石二鳥を狙ったわけです。これが当たって、裸で入場した一人は「タダというのと、おふざけが気に入りました。すばらしいギャグだと思います」と絶賛。また普通の服装でちゃんと入場料を支払って入った人も、「裸体画よりはナマの裸体の方がはるかにいい」と感じたようで、さらにある若い女性が一糸まとわぬ姿で館内を闊歩する写真が全世界にインターネットで掲示されるとたちまちアクセス記録を樹立したようです。しかし考えようによっては、『納涼が悩涼になったのでは?』と勘ぐるのは…邪道です!
次は「慄」です。旧東独の北部の小村で、39才の女性が自分が産んだ9人の乳児を次々に殺害していたという前代未聞の戦慄ニュースがありました。この女性の近辺の住人が植木鉢に隠されていた乳児の骨を発見したことがきっかけで事件が明るみに出て、付近一帯から計9人の乳児の遺骨が確認されたのです。調査の結果、この女性は1988年から2004年の間に9人の乳児を一人で出産したあと、すぐ殺害したようで、出産時に大量のアルコールを摂取していたので記憶にないと供述しています。しかし9回妊娠して9回とも誰にも気づかれなかったというのが異常で、彼女の夫(今年5月に離婚)や肉親でさえ、「太ったり痩せたりはしょっちゅうだったし、顔がむくんでいたのはアルコールのせいだと思っていた」と述べて妊娠に気づかなかったことを強調。この女性をとりまく人間の無関心に愕然としたこの州の内相が「旧東独では無関心であることが無難であるとされていた。強制されたプロレタリア化が暴力化の原因となっている」と旧東独を非難したことで各方面から批判の嵐をうけ、来月の総選挙の思惑もあって数日後にお詫びのコメントを出すハメに…というのが事件のあらましです。しかしこの事件で問題となっているのが殺人よりも冷え切った人間関係の方なのです。なぜ誰もこの哀れな女性を助けようとしなかったのか、あるいは声をかけようとしなかったのか、誰も妊娠出産に気づかなかったというのは、まず信じられない。キリスト教徒にとって重要な隣人愛はどこへいった、云々。価値観の喪失に対する恐怖感が広まり、ドイツ全体が慄然としています。読者の皆様におかれましては、背筋が寒くなりましたでしょうか?








