去る1月27日はモーツアルト生誕250周年記念日でした。従いまして、本年はモーツアルト・イヤーということで世界各国いたるところで例年以上にモーツアルトの音楽に浸ることができます。これと平行してモーツアルトの毒殺説や極貧葬儀説についても今まで以上に諸説紛々で多くの議論がなされています。これらは現在では医学的および歴史的観点からみていづれも信憑性がないとされていますが(毒殺説:幼児の際に罹患したリューマチ性熱病による慢性心臓炎症が死因、極貧葬儀説:当時の一般的な葬儀は簡素なものであった)、今日のテーマはそんな大上段に構えたものではなく、ごく甘くつまらない小生の所感です。
先月14日は言わずと知れたバレンタインデーで、小生はその前日まで日本に滞在していたのですが、菓子屋ではチョコレートばかり目に付き、新宿駅のデパートでは世界各国からのチョコレート特別展までありましたので興味半分に覗いてみました。
日本ではどういうわけかベルギーが高級チョコレートやプラリネの本場として著名ということですが、フランスやスイスの売店も健闘していた反面、オーストリアはウィーンのチョコレートメーカーが一軒だけでした。オーストリアで一番有名なチョコレート菓子は「モーツアルト・クーゲル」といい、折からモーツアルト生誕250周年ということで、派手にこの菓子を売り出しているのではないかと思い探してみたのですが見つからず、「やっぱり…」と少なからず失望しました。このコラムの読者にはチョコレートに目がない方が多いと聞き及びましたので、このオーストリアの銘菓について説明いたします。
クーゲルというのはドイツ語で「球」という意味です。モーツアルト・クーゲルはその名のとおり球状のチョコレート菓子で100年以上の歴史があります。ザルツブルクのフュルストという菓子職人が長い年月をかけて1890年に作り出したもので、ピスタチオを混ぜたマジパンを中心核とし、これにヌガーそしてチョコレートをかけたものです。この菓子にフュルストは当時、現在ほど有名ではなかったとされるザルツブルク出身の作曲家であるモーツアルトにちなんで、最初はモーツアルト・ボンボン、のちにモーツアルト・クーゲルと名づけて売り出したのです。このチョコレート菓子は1905年のパリの国際博覧会で金賞を受賞し、世界中に知れ渡るようになりました。現在、オーストリアの大手菓子メーカーのミラベルが年間9000万個以上のモーツアルト・クーゲル製造しています。本家の製造元のフュルストもオリジナル(本家)・モーツアルト・クーゲルを10人の従業員で年間150万個製造しているとか…。
しかし、この菓子は日本で売れるはずはありません、なぜならマジパンが日本人の口に合わないからです。その理由としてマジパンの歯ざわりの悪さとアーモンドの特有の香りが挙げられます。小生が思わず洩らした「やっぱり…」もここに根拠があります。もうひとつの売れない原因はおそらくその大きさでしょう。小生の眼前にドイツ・レーバー社製のモーツアルト・クーゲルがあるのですが(発明者のフュルストが特許を申請しなかった関係でいくつかのメーカーがあります)、直径およそ3cmでまるごと口に放り込むにはちょっと大きすぎるきらいがあります。おちょぼぐちの日本人女性にとってはなおさらでしょう。モーツアルト・クーゲルを味、形の面で日本人向けに『編曲』できる菓子職人の方、いませんか?








