今月のコラムのテーマをすぐご理解できた方は、相当なドナルド・ダック・ファミリーのファンの方でしょう。「ジャイロ・ギアルース」というのはダック・ファミリーの発明家で、なかなか面白い発明をするのですが、やはりマンガに登場するだけあってどこかシマらないのです。ドイツではこの人物、いやアヒルは著名で大人も子供も知っていて、このアヒルの名前(ドイツ名をダニエル・デューゼントリープといいます)は市井のアマチュア発明家の代名詞になっているほどです。
すこし前になりますが、4月中旬までスイスのジュネーヴで国際発明見本市(Salon International Of Inventions)が開かれていました。出品物には唐辛子の辛さの測定器、鳥のように羽ばたきながら飛ぶヒコーキ、光る傘などジャイロ・ギアルースも顔負けの奇抜なものばかり。「くだらない」と一笑に付してしまってはいけません。この見本市は世界的に有名な見本市で本年度の出品数が770点。主催者のヴィンセント氏は「作品をバカにしないでください。蔑視も嘲笑もお断りします。発明者というのはとても敏感で繊細な人間なのです。」と超過敏な発明者を偏見と中傷から守ろうと必死なのですが、発明品を見る限り失笑をこらえるのは難しいようで…。以下に新聞に掲載された市井のジャイロ・ギアルース達の傑作を発明者自身の解説つきで3品ご紹介いたします。
<1>
前輪駆動付き自転車:発明者 ロベルト・ヴァルトマイアー(スイス)
「競輪自転車に追加の駆動を取り付けました。ハンドルのところに小さな車輪をとりつけ、これを前輪とチェーンで結びました。腕を上下に動かすことで走行力が10%アップします。また上体のトレーニングにもなります」(註:普通の自転車は後輪駆動のみです)
<2>
16枚羽根の飛行機:発明者 ジャン=エマヌエル・フォウムビ(米国)
「この発明は飛行機業界において革命的なものです。私の発明した飛行機には16枚の羽根があり、鳥が羽ばたくのと同じようにこれらの羽根が上下運動します。タービンとプロペラは不要です。羽根は自転車用の原動機で動きます。このことでエネルギーが大幅に節約されます。私は過去10年間、発明に没頭していますが殆ど失敗ばかりです。しかしこの飛行機は50センチも浮かびました。」
<3>
メークアップ用眼鏡:発明者 シルヴァナ・ミセリ(米国)
「私のように遠視(註:欧米人には若い人でも遠視の人がけっこういます)でメークアップしようとする女性にはハンディがあります。遠視の人間は至近のものが眼鏡なしでははっきり見えず、マスカラを施す場合は目の至近で困ります。そして眼鏡をかけてマスカラをしようとすると眼鏡のつるやレンズが邪魔になります。長い熟考の末、あるアイデアが浮かびました。まず眼鏡のつるを大きく長くし、耳から45度の角度でつるを上方に伸ばし、おでこの前10センチぐらいのところで半円に曲げ目の前方10センチのところにレンズがくるようにします。こうしますと眼鏡をはずさなくてもメークアップができるようになります。眼鏡が鼻にかからず前方にあるので目と眼鏡のガラスの間に十分空間があるからです。少々(註:「甚だ」といったほうが正しい)眼鏡がかさばるのが難点ですが、たためばそう問題にはなりません。しょっちゅう使うものでもありませんから。」
というのですが、実用性がほとんどないというところがすごいですね。発明というのは人類にとって有意義なものとばかり錯覚していましたので、こういう、なんか自己満足みたいなものも発明に入るというのはオドロキでした。しかし見習いたいのはこの発明者の方々の不屈の闘志と並々ならぬ情熱で、多少人間的にも作品的にもズレていようと、目標を定めて突っ走る人間には輝きがあります。一度ぜひこの国際発明見本市を訪れて、発明者の方々と直接話をしたいと思うことしきりです。








