先月のコラムでドイツおよびフランスの禁煙法の現状をお知らせしましたが、先月スイスとオーストリアを回りましたので、コラムの続編として記します。
まずスイス。州によって違いがあるようですが、小生が赴いたところは禁煙法とはまだ無縁でした。チューリヒ駅構内にある、小学校の体育館ぐらいの面積のあるだだっ広いレストランに入りましたら隅のコーナーに申し訳程度のいくつかの机に「禁煙席」と書いたごく小さな紙が置いてあります。しかし境界などは皆無で天井には濛々とタバコの煙が漂っていまして禁煙席などを設けるのが全く無意味。またサン・モリッツのホテルではレストランは禁煙、バーは喫煙OKという折衷案。どうやらオーナーの考え方ひとつで決まるようです。庶民運動は活発で、「国民の25%しか直接喫煙者(註:ふつうの喫煙者のことです)がいないのに、100%が不本意な間接喫煙者(註:本人は喫煙者ではないのに、空気中のタバコの煙をいやおうなしに吸わされている人たちのこと)だ」というモットーのもと、禁煙法賛成者の署名を数万人分集めたとか、レストラン従業員は毎日平均して38本分のタバコの間接喫煙にさらされているとかをネット上で掲示して意気軒昂たるところを示しています。
オーストリアのザルツブルグでは同じような光景でしたが、この街はドイツ最南端のバイエルン州に隣接しています。この州に禁煙法が導入されて以来、国境を行き来するクルマの台数が一気に跳ね上がったといいます。つまり食後に一服タバコをつけたいドイツ人はクルマでザルツブルグのレストランへ行き、喫煙レストランを嫌うオーストリア人はこれまたクルマでドイツへ渡ればいいのです。これは先月号で書きましたスモーカー教の教団みたいにアイデア倒れではなく、国境付近に住んでるというメリットをフルに生かした即決対策で、静かに敷衍しているようです。オーストリアは昨年秋のヨーロッパ30ヶ国を対象にしたタバコ防止政策コンテストにおいて、100点満点でわずか35点を獲得して最下位。ちなみに第一位つまり最優秀はダントツでイギリス、スイスは18位でした。
さて、もうひとつ気になる国があります。イタリアです。禁煙法の実態を見学するためにだけミラノまで赴く気は起こらず、知人の話で我慢することにしました。彼の話によれば、レストランでタバコが吸えないので、レストランの入り口の前でタバコを吸うことになります。ドイツではスモーカーがレストランの用意した灰皿を持って表へ出て喫煙していますが、イタリアでは灰皿さえも許されず、つまるところ客のスモーカーが吸殻を出入口にポイ捨て。これをレストラン従業員が掃き集める…といったことになっているようです。驚いたことにイタリアではすでに3年も前から禁煙法が実施されているとかで、施行当時はノーベル文学賞受賞者のダリオ・フォや当時の防衛大臣が猛反発を行ったようですが禁煙法回避には至らなかったようです。レストランはもちろん、ピザ屋、スパゲッティ屋、喫茶店、バーまで禁煙で、喫煙はスモーカー用の部屋が別にあって換気扇が取り付けられてあればOKということです。罰金も結構高く、レストランの経営者や飲み屋の亭主に最高で35万円、吸った本人は最高で4万4千円、妊婦や子供が近くにいたら倍額を請求されます。イタリア人がエスプレッソを飲んでタバコを燻らさないというのはどうしても信じられない。やっぱりなんとか理由をつけてミラノまで出向かなくてはなりません。蛇足ながらイタリアは上記のタバコ防止政策コンテストで10位でした。
タバコが似合う国民の双璧、フランスとイタリアの飲食店で禁煙法が布かれ、中立国で清潔というイメージのスイスやオーストリアでは喫煙がいまだに罷り通るというのはどうも腑に落ちません。








