文芸作品の映画化におしなべて批判的な人や拒絶反応を示す人が結構いますが、凡作や駄作ばかりと決めつけることは決してできないと常々思っています。
いまちょうど小生の住まいのすぐ近くの映画館で『潜水服は蝶の夢を見る』をやっていますので観てきました。今年初め、ウィーンの旧友からたまたまこの本、すなわち映画の原作を薦められて読んでありました。パリの女性雑誌『ELLE』の編集長で42歳の働き盛りの男がある日突然ロックトイン症候群という難病に襲われ、聴覚と左目以外の感覚をすべて消失。体を全く動かせないながらも敢然と生き、病中の所感をエッセイ風に気が遠くなりそうな方法と努力で書き取らせて出版し、大好評を得る……という凄まじいばかりの実話です。ふつうの人間なら完全に打ちのめされて何もできなくなってしまうようなこれほどのハンディを負いながらも、本人は、エスプリを交えて見事に記しています。それにもかかわらず、読者である小生の方が逆に重い気分になり、最後まで読み通すのは正直言って骨が折れました。ですからこれを映画で見ようという気にはならなかったのですが、多くの賞を受賞しているとありましたので、どうかな? 単なる重苦しい物語ではないのかな? と思いながら見たのですが、悲愴感を押さえたパステル調の仕上がりで、原作よりも映画のほうに感動を覚えてしまいました。
数年前に、感動ではなく感謝の念を覚えた映画に『ピアニスト』があります。原作はオーストリアのノーベル文学賞受賞者のイェリネク(註:女性です!)の同名の小説ですが珍しく小生が最後まで読み通せなかった小説です。タイトルもタイトルだし、ノーベル賞作家の代表作とあらば、ぜひとも読まねばなりません。で、はりきって読みはじめたのはいいのですが、次第にページをめくるのが遅くなり、ちょうど半分あたりで先へ読めなくなってしまい自分でも驚いてしまいました。内容は精神に異常をきたしている(と思われる)、中年にさしかかる独身の女性ピアノ教師が主人公で異常行動が次から次へと出てくるのです。ギブアップして本を放置してしまい、もう二度とこの本を開くことはあるまい……しかし結末は気になるな、と考えていましたら映画のDVDが販売されておりました。これだとどういうわけだかすんなり観ることができて、結末も判明し大いに安堵したことを今でもよく覚えています。主人公のみならずこの作家自身も精神的にかなり不安定のようで、ノーベル賞授賞式を「人前恐怖症」を理由にキャンセルするという前代未聞なことをやってのけています。そもそも「この作家にノーベル文学賞?」と訝る方々が当のオーストリア国内にも少なからずいました。
つい最近、小生にとって2冊目のギブアップ小説に出くわしました。先ごろ芥川賞を取った「乳と卵」です。この小説が映画化されたら見に行くことにします。








