今回は1月のコラムの続きです。
針鼠が冬眠から目を覚ましたのが3月下旬で、家内が所用で3週間家を留守にする数日前のことでした。「ちゃんと餌を毎晩作ってやってね!レシピは書いて台所の壁に貼ってある。」と言い残して行きましたので、毎晩違った餌をレシピどおりに作ってやったのですが、このレシピが二日分だとは気付きませんでした。きれいに平らげるし、冬眠明けで腹が減っているのだろうぐらいしか考えなかったのですが、3週間ぶりに戻ってきた家内が針鼠を見て仰天。「随分肥えたじゃない…どうしたのよ!」と言いながら体重を測ると1200グラムと冬眠明けの800グラムの50%増。気付かずに毎日二日分の餌を与えていたので当たり前です。
1キロを超えれば自然に戻しても大丈夫ということなのですが、いきなり放り出しても面喰うだけだろうし、ひとまず柵を作ってその中に針鼠を入れ、餌皿とおわん型の家を置いて、土壌、芝生など自然に馴染ませようということで、4月の末に写真のようなものをセッティングしました。その日の夜、即脱走するだろうと考えていたのですが当の針鼠は家から出ようとせず、訝っていましたら、はたして3日目の夕刻、家内が見守る中、家内の針鼠より一回り小さい別の針鼠がどうやら餌につられて地面を掘って柵内に闖入。二匹が小競り合いを始めました。針鼠がいがみ合う場合、横から体当たりを食わせるのが流儀のようで、しばし見物していた家内が闖入者をつまみだして落着…そしてその夜、家内の針鼠はいなくなりました。
家内はがっかりしていましたが、①闖入者があったということは庭に他の針鼠がいるということだ②夜の帳が下りると彼らは庭で跋扈しているに違いない③ゆえに私の針鼠と再会できる可能性は大いにある…という穿った三段論法を立て、夕闇の庭に椅子を持ち出し、息を潜めてじっとしていると、3匹ほどが違った方向からご登場。リンゴの木の枝に吊るしてある小鳥用の餌箱の真下へと移動します。はて?と首を捻っていましたら、どうやら針鼠は小鳥が餌箱から弾き飛ばすピーナッツの小片やヒマワリの種を漁りにくるようなのです。
ならばと、写真のように針鼠用の餌皿を地面に二枚置き、毎晩餌を入れ屋根をつけてさらに観察を続けますと、出てくる針鼠が5匹ほどにもなりました。ところが一匹、大きなボス的なのがいて小さいのを威嚇し、威嚇された方は丸くなって防戦。ボスが強烈な体当たりを横から食らわすと小さい方はコロコロと毬のように転んでいきます。そんなことにはいっさいかまわず、家内はやっきになって自分の針鼠を探すのですが、なんせボスを除いてサイズが同じようなのばかりで区別がつきません。放す際に背中にペンキでも塗っておけばよかったのです!しかし家内はまたもや独自の三段論法で自分の針鼠を突き止めました。いわく①針鼠はどうやら習性として庭の茂みをあちこち慎重に歩いてから餌皿に向かう②ところが一匹だけ垣根から出てきて一直線に餌皿に向かうのがいる③これが私の針鼠に違いない。彼は冬眠前、地下室で自分の家から餌皿までの最短距離を歩くことしか知らなかったのだから!爾来、家内は毎晩夕暮れ時に双眼鏡を持ちだして窓から彼女の針鼠を観察しています。
これほど惚れ込んだところで、針鼠の寿命はせいぜい数年らしいです。家内のたっての願いは孕んだ針鼠が新たに設置した高級針鼠住居に住み着いて出産することでして、越冬できない未熟児がいるようなら地下室に逗留させてやる…というのですが、滅相もない話で、万一そのような事態になりましたら、針鼠(その3)を執筆いたします。








