小生の住むドイツ最南西部のバーデン・ヴュルテンベルグ州(以下BW州と略します)は昨春の州選挙で緑の党が第一党となり、ドイツで初めて緑の党の知事が誕生した経緯についてはすでにこのコラムで記しました。この州は小生が思うに、そして感じるに、いわばドイツの関西で、州民性がよくいえば「勤勉、倹約」、悪く言えば「ケチ、がめつい」で、方言が極めて強烈なところも関西弁と共通していて、二言、三言しゃべればこの州の人間だというのがすぐに判明するぐらいです。それぐらいアクが強いので揶揄されることもあるのですが、この州の人間はこの方便しかしゃべれないのか、しゃべらないのか、あるいは両方なのか、そのあたりは定かではありません。ちなみに小生は当地に30年近く住んでいますが、この方便をしゃべることができませんし、しゃべる意思もありません。
で、この州の広報部が数年前に『私たちはなんでもできます。標準語以外は!』と自虐ネタのコピーを各種メディアに流しました。これを聞いたり読んだりした人は思わず笑いだし、ドイツ各地で大変好評で、このキャッチフレーズの知らない人間はいないと思われるほど流布しました。「なんでもできます=我が州の人材はなんでもできるぐらい優秀です」という高慢なセリフを、「標準語ができない」という自虐ネタで緩和したきわめて有効なうまいフレーズでした。
爾来数年経ち、そろそろ次のコピーを…ということで最近打ち出したのが『ザクセン・アンハルト州(以降SA州と略します)の皆さんは早起きですが、わたしたちも早起きです。しかし誰も落第しません!』という、かなり長いフレーズ。前回の自虐的な要素は全くなく、自信過剰気味のテキストです。少し説明しますと、旧東独のSA州は6年ほど前から州のコピーとして『私たちは早起きです』を使っています。このウラには、あるアンケート調査で「SA州の住民の起床時間は平均6時39分でドイツの他の州の住民より早起き」というデータがあります。ところがこの州では10歳から15歳までの生徒のうち、実に7%が落第し、生徒全体をみても中退者数がドイツ全16州のうち2番目に高いという報告があり、これに反してバーデン・ヴュルテンベルグでは中退者数がドイツの州で最少となっています。これを踏まえて上記の『誰も落第しません』が出てくるわけです。
面白くないのがSA州で、呉越同舟でこの州の各政党が侮辱的なコピーに噛みつきました。曰く、「ドイツ統一後20年経っても“東はバカ”という風評をダシにして自分の州の宣伝に使うという神経はおよそ理解できない。BW州は知的な州ではないことの証明だ。金持ちの州の傲慢だ」とカンカン。ところがBW州の担当者は平然たるもので、SA州の立腹が分かりかねるとコメント。こちらの言い分は「この新しいコピーで、いずれ確実に不足する専門職の人材を、事態が悪化する前に確保したいのです。また『落第』ですが、これはSA州だけを指しているのではありません。そして、あるコピーが他からからかわれて使用されるというのは、そのコピーにさらに磨きがかかるいうことです。SA州にとっては我々のコピーはよいPRではありませんか」というもの。なんか高慢の上塗りといった感を否めません。
で、当のSA州の知事は「経済的に見てヨーロッパの上位クラスに入る州の専門職を募るコピーに我が州が取り上げられるということは、BW州が我々を対等に見ているということだ。我が州からは多くの若者が、標準語とは似ても似つかぬ言葉をしゃべるBA州に移ったが、これらの若者を取り戻そうではないか。挑戦を受けて立つ」と鷹揚な態度。さてどちらに軍配が上がりますか…いずれにせよ、このBW州の新しいコピー、流行らないと思います。
追伸:10月上旬の夕刻、庭に設置してある餌皿の上に鎮座していた小さな針鼠と、ちょうど餌を皿に入れようとした家内とが鉢合わせ。やむなく家内は固まってしまった針鼠を餌皿から除外し、餌を皿に入れて息を潜めてじっと様子を見ていましたら、かなり経ってから針鼠は動き出したらしいです。重さからして500gぐらいだったということですから、夏に生まれた針鼠でしょう。針鼠の赤ちゃんを見ることはできませんでしたが、まだ成長しきっていない針鼠を見て家内は満足したようです。








