先回の日本出張を終えて成田からドイツへ戻る際に、空港の本屋で『暮らしの哲学』という文庫本が目に留まりました。副題に「やったら楽しい101題」、「誰でもできるカンタン哲学」とあり、パラパラとページをめくっていましたら、面白い題に出くわしました。「おしっこしながら水を飲む」と「宇宙が身体の中に流れ込む」ような効果が得られるとあります。こういった類の記述には小生の内部に潜む天邪鬼が黙ってはおりませんで、即、実験にとりかかりたいと思いましたが、さすがに飛行機の中では実行不可能です。ドイツに戻ってさっそく実験してみましたが、飲水がとぎれてはダメというのが案外難しいのです。1回目は失敗に終わりましたが、2回目は水を大量に継続的に無理やり飲み込みましたら、あたかも飲んだ水がただちに排尿されるような錯覚に陥りました。著者のいうところの「喉と尿道を結ぶ直列回路の発見」です。しかし、そこからが問題で、著者(ドロワというフランスの哲学者)が記しているような「身体が清められる感じ」や「宇宙が身体を流れていく」といった感覚は体感できず、ましてや「とても新鮮な心地」になるに至りませんでした。きっとなにかコツのようなものがあるのでしょう。しばらく続けてみるつもりです。
で、この題のページには星の王子様らしき男の子が、立小便しながら飲水しているイラストがあります。これを見て、立小便(男性)と座小便(女性)では感じ方が全く違ってくるのではないかと気になりました。そしてさらにこのイラストは日本語版にしか載っておらず、オリジナルのフランス語版にはおそらくイラストはないように思えます。おまけにこの日本語版のイラストは日本人女性が描いたものです。イラストレーターにとっては立小便している男の子を描くことにさしたる理由はなく、単に女の子よりは男の子の方が描き易かったのだろう…などとくだらない考えをめぐらしながら、これもある意味でカンタン哲学の一環かと過大評価して、ぐるっと遠回りしてこの段落の最初の疑問に戻りました。そこで家内という女性が家にいることを思い出し、「宇宙が身体の中に流れ込む実験をやってくれ」と依頼しますと二つ返事でOK。ところがいざ実践となると「?」という表情をする。有無を言わさず実験を強行させましたが、笑いをこらえることができず失敗。二度目は中断することなく水を飲みつづけることができず失敗。その後トライするものの、どうしても水を継続して飲むことができない。つまり上記の直列回路さえも体感できないわけです。どうやら家内の場合は強い喉の渇きと尿意が同時に生じるタイミングをひたすら待つ以外にないと思われます。
このようなやっかいな題だけではなく、「つまらないものに執着する」→「心の支えになる」、あるいは「森を散歩する」→「魂が裏返る」といったすぐにでも共感あるいは納得できる題もあり、どの題もイラストを含めて2ページ弱ですので読みやすいし考えやすい内容で、本の副題に偽りはありません。「青い色の食べ物を探す」→「謎だらけ」といった虚を衝くような題もあります。著者は「青い色の食べ物はない」と断定します。そして「水色や藍色、群青色の食べ物など胸が悪くなるような感じ」と切り捨てています。しかし小生にはもうかれこれ10年ぐらい前に、熊本の農場で昼食時にいただいた茄子の浅漬けの鮮やかな群青色が今でも脳裏に残っています(むろん表皮の部分です)。それ以外には…今のところ思いつきません。青い色の食べ物はないということについて著者がいくつかの結論を挙げて読者に問うていますが、その一つは「空や地球や海の青を口からとりいれることはできないから」というもので、とにかく発想が面白いです…久しぶりに楽しい本に出会えました。








