
カシスはヨーロッパ原産のユキノシタ科の植物で、和名は黒(フサ)スグリと言います。黒(フサ)スグリというと、余計に何だか分からなくなってしまいますが、ベリーの一種です。
初夏に収穫されるカシスの果実は直径8~10ミリ程度の濃い紫色をした球形で、酸味が強くジュースやジャム、リキュール等の原料として広く利用されています。
日本では食用としてあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパではその酸味の強い果実を食後に食べて消化を促すことに役立てているそうです。
ベリー類は、他の植物があまり生育しないところ、分布していないところに見かけることができます。痩せた土地、砂地、泥炭地、針葉樹の森の酸性層、岩層上のうすい腐食質層などを好みます。
ベリー類の中で日本でも比較的馴染みが強いブルーベリーとカシスを比較すると、カシスの方がより日光を好むので、カシスはブルーベリーほど森の奥深いところには生育しません。また、カシスはブルーベリーより乾燥と寒さに強く、寒い北方や高山でも元気に育つので、スカンジナビア半島の北部にも多くみかけられます。
他の同じ科の植物は、大きく優美な花を咲かせ、花をつくるためにパワーを費やしますが、カシスは控えめな花を咲かせ、そのかわり貴重な果実をつくるのも特徴のひとつです。
カシスには、フルーツ酸、タンニン、ビタミンCが豊富で、最近はカシスの実からの抽出物アントシアニン濃縮物(カシスポリフェノール)の眼に対する効果が注目を浴びています。目の疲労回復、仮性近視抑制、鳥目の改善などが研究発表で報告されています。目の疲労というとブルーベリーがよく知られていますが、実は目への効果では、カシスはブルーベリーの数倍あり、即効性・持続性の高さも実験により明らかになっています。その他、肩・腰の疲労軽減や末梢血流量の増加、末梢血液循環の低下が原因である肩こりや腰痛にも効果があるそうです。
北欧民族は古代からカシスを越冬のために重要な栄養分とみなし、また、アントロポゾフィー(人智学)的な観点から見ると、カシスの果実は形成プロセスを補助し、過度の代謝を抑える、そして、消化器官内の感染性炎症の原因となるバクテリアに拮抗するということですので、とっても貴重で強い果実なんですね!
果実は甘味が少なく、香りもよいとはいえず、味も軽い苦味があります。そのかわり豊富なビタミンや酸を含み、酸性がとても強い果汁は防腐剤なしでも保存が可能です。
ちょっと話はそれますが、日本ではカシスを使ったカクテルはお酒好きの方なら1度は飲んだことがあると思いますが、カシスは16世紀よりフランスで栽培され続け、そのわずか400年後にはリキュールとして利用され、有名な”クレーム・ド・カシス”が誕生したのです。白ワインとカシスリキュールで“キール”、他にもソーダと割って“カシスソーダ”など、爽やかだけど酸味と独特の風味のカクテルを作ることができます。
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。
英国ITEC認定アロマセラピスト 市川 恵美子