エーデルワイス・・・誰もが「空気の澄んだ山に咲く美しく可憐な花」という印象をもっていると思いますが、その印象は正解でもあり、又、不正解でもあるのです。
エーデルワイスは標高1,500~3,400mの自然が美しいヨーロッパアルプスの山岳地帯に生息する植物です。高地の山の環境は、景観としてはとても美しいのですが、夏でも気温が零下になることもあり、強い紫外線や風、低い気圧、温度や湿度の変化の激しさなど、人間の想像をはるかに越える厳しい自然環境なのです。又、土壌は石灰質の岩だらけなので、あまり栄養価には富んでいません。その中でたくましく成育し生き生きと美しい花を咲かせることのできるエーデルワイスは、実はとてもパワー溢れる植物なのです。
キク科の植物で、学名は「レオントポディウム アルピヌム Leontopodium alpinum」。花のように見える部分がライオンの足のように見えることから、レオン=ライオン、ポディオン=足、又、アルプスに咲く花であるため、このように名付けられました。多年草で、細かい毛に覆われることで厳しい環境から身を守る保護能力に優れています。アルプス地方ではもっとも代表的な花で、白い星のような形をした部分は、花のように見えますが、実は花ではなく葉なのです。このフェルトの様な白い葉の中心に、何百もの細かい管のような形をした舌花が集まっているのです。
エーデルワイスは、スイスアルプスだけでなく、遠くはヒマラヤ、モンゴル、シベリアにまでわたって広範囲に分布しています。成分としては、美肌に役立ち血管を保護するタンニンやフラボノイドの含有が高く、又、保護力が強く、消炎・抗炎症作用、収斂作用、鎮痛作用、鎮静作用の高さが評価され、古くから自然療法に活用されてきました。レモンや松を思わせるような揮発性の芳香があり、最新の研究では動脈硬化の予防や抗酸化作用などの効能も確認されている、素晴らしい働きをする植物です。
今では法律によって保護されるほど貴重な花で、10年程前より、多くの製薬会社や化粧品会社がエーデルワイスの花のエキスを利用し始めました。化粧品分野においては、エーデルワイスエキスは角質層内部で水分やNMF(Natural Moisturizing Factor)を抱え込む働きが強い、ということで某有名メーカーを含む様々な化粧品会社がスキンケア化粧品に使用してきています。
以前ヴェレダで、エーデルワイスを化粧品への使用を検討したところ、野生の採集量は限られごくわずかであり、一般に流通されているエーデルワイスエキスは、有機栽培のものではない上に、抽出する際に使われる合成溶媒がヴェレダの原料基準に適していなかったため、使用できなかったという事情がありました。そこでヴェレダ社では10年もの歳月をかけて、薬草・香草を専門とする植物博士とともに研究を行い、エーデルワイスを有機栽培させることに成功し、更に、HAB(スイス ホメオパシー 薬局方)基準をクリアする溶媒を用いてエーデルワイスエキスを抽出することに成功しました。こうして得られたエーデルワイスエキスはヴェレダ独自のものとして、ヴェレダ社が独占権を所有しているそうです。
ホメオパシーとは…ドイツの医学者サミュエル・ハーネマンが確立した療法で、日本語では同種療法、類似療法と訳されます。”類は類を癒す”という原理で、似たものが似たものを治すということです。つまり、身体に害を及ぼす物質を、ごく微量で安全な量を与えるならば、病気を癒す力も備えているとして、自然治癒力を高めていく治療法です。
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。
植物化粧品開発研究員 宮地 博信



