
ユーカリの木は、世界で最も高い樹木のうちのひとつで、その種類は500以上あるといわれています。ある種類のユーカリの木は、100m以上の高さに成長します。この木の原産国はオーストラリアですが、現在では広く亜熱帯地方で栽培されています。ユーカリの名前はギリシャ語の「エウカリプトス」に由来し、「よくおおわれた」という意味があります。オーストラリアにあるブルーマウンテンはユーカリの木に覆われています。ユーカリの木が出すガスが青く森全体を覆うため、この名前がついたようです。青く霞んだ景色は今までに一度も見たことがないため、ぜひ一度見てみたいと思っています。
さて、ユーカリといえばコアラを連想する人が多いでしょう。そのコアラは、ユーカリの葉しか食べません。水さえもほとんど飲まないようです。他の植物や果物をいくら与えても決して食べません。しかしながら、コアラがなぜユーカリだけ、しかも500種類以上あるユーカリの中で、ほんの数種類しか食べないのかは大きな謎で、その結論は現在出ていません。名古屋の東山動物園の場合では、コアラの主食はテレチコルニス、カマルドレンシス、ロブスタ、プンクタータの4種類のユーカリです。主食となる種類のユーカリに共通しているのは、あまり強い香りがなく樹液の糖分含料が高いもののようです。なかでもプンクタータは冬になると吹き出した樹液が固まって白い砂糖の結晶のようになるほどで、人が食べても甘く感じます。
ユーカリの栄養分の粗たんぱく質は、窒素分が高いといわれているクローバーより多く、鶏卵の3分の1以上にあたる4.6%も含んでいます。粗脂肪は普通の牛乳より高く、濃厚牛乳並の3.9%もあります。糖質等(難溶性無窒素物)は22.7%もあり、でんぷん食品であるバナナに匹敵する含有量をもっています。また、全体としてはエネルギーの約70%を糖質から約15%をたんぱく質から供給されており、長寿食といわれる日本型の食生活に近い栄養バランスであるので、ユーカリ以外の植物を取る必要がなかったといえます。
しかし、コアラがユーカリしか食べないため、ユーカリにとってコアラは天敵になります。ユーカリは、天敵であるコアラに食べられないように葉に毒性をもつ化合物を作り出せば、コアラもそのことに対応して体内で解毒できるように進化していくようです。ユーカリとコアラの戦いはまだまだ続きます。 また近年、地球規模での環境破壊が進行しつつあります。それを防ぐために、日本の製紙会社が行っている海外の植林事業には、ユーカリの木が多く使用されています。それは、ユーカリの木は成長が早く、約10年で伐採できるようになるからです。
何百種類もあるユーカリの中から採れる精油のうち、価値ある精油が採れる品種は約15種類だけです。アロマセラピーで使用される精油は、「Eucalyptus globulus」から水蒸気蒸留されたものが有名です。この精油のクリアーな香りは、頭をすっきりとさせ集中力を高めます。その作用は、鼻づまりや風邪の諸症状をやわらげます。また、最近では口コミで広がっているので皆様ご存知だと思いますが、花粉症にも効果があるといわれています。そのほか、すぐれた抗菌効果を持っていることもでも良く知られています。今年も花粉症の季節がやってきました。今年は花粉の飛散が少ないようですが、まだまだ油断大敵です。これから花見などで外出の機会も増えると思います。花粉症の症状の緩和に、ユーカリの精油を使ってみてはいかがでしょうか。
参考文献: aromatopia 第11号 フレグランスジャーナル社発行
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。
植物化粧品開発研究員 宮地 博信