
ハマメリスは日本名「アメリカマンサク」と呼ばれ、その名のとおり原産はアメリカ東部、カナダ、メキシコでやや湿度の高い森林に分布している。樹高5~10mの落葉樹で、葉は有柄互生(葉柄(葉軸)があり、節ごとに1枚ずつ方向を異にして葉の生ずる)し、長さ8~12cm、幅5~8cmの広卵形。花は初秋から晩秋にかけて、鮮黄色の細長い花弁が10本ほど放射状に広がった形(著者の知識の中で例えるなら、ちらし寿司の「錦糸タマゴ」を10本ほど集め、小枝にくっつけた状態)をし、花数は少ない。アメリカの先住民であるインディアンは薬として創傷や皮膚炎症の緩和に使用していたとされる。また古くから肌の輝きに関与する毛細血管の改善に用いられていた。
同じマンサク科の類似植物は日本にも存在する(マンサク Hamamelis japonica )。2月中旬から3月にかけて開花し、冬山に春が訪れるころ山肌を黄色く彩るのはこの「マンサク」である。もっと身近に見られるマンサクは庭園樹として公園などに植えられているシナマンサク(中国原産)で黄金色の花は、彩りの少ない1月下旬~2月にかけて人々の目を楽しませてくれています。
アメリカマンサクの生葉には10%以下のタンニン(おもにガロタンニン、縮合カテキン、プロアントシアニジン)とサポニン、コリン、樹脂、フラボノイドが含まれ、また、樹皮には不揮発性油がわずかにあり、6%以下のタンニンが含まれる。このアメリカマンサクの葉および樹皮などを水蒸気蒸留法(著者の知識で例えるなら利用部位を茶碗蒸しのように蒸し、水蒸気を管に通し、その管を冷やすことにより結露が起きて結果、得られる水液)により産生されたものが全成分表示でおなじみの「ハマメリス水」(Witch Hazel Distillate)である。また、これにエタノールを加えたものもある。異なる抽出方法として溶媒抽出法がある。これはエタノールや1,3-ブチレングリコールなどに利用部位を浸し、紅茶のように成分を抽出する方法で「ハマメリスエキス(ハマメリス抽出液)」(Witch Hazel Extract)となる。
期待される効用として民間療法的には虫さされや日やけなどの軽い皮膚炎症を緩和するとか、すり傷、切り傷、あざなどの軽傷の治療あるいは痔、のどの痛み、口内炎などの治療に効果があるといわれているが、化粧品としては収斂作用(肌をひきしめる作用)がある。収斂性で種々の治療効果を示すタンニンが多く含まれるからだ。しかし、水蒸気蒸留されたものはこのタンニンを含まないが、同様の効果がある。
このアメリカマンサクをはじめ、植物は意思を言葉を発して対話することが出来ないため確かなことはわからないが、ひとついえるのは「何とも不思議な科学では理解しきれない何かを秘めた生き物である」ということである。
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。
農業研究家 山口 浩