
トチの木(トチノキ)は街路樹としてよく知られています。東京霞ヶ関の桜田通り(国道1号線)のトチノキは樹齢約90年の大木で、5月の花期には白い葉と緑の花との見事な景観を与えてくれます。花は、円錐形の塔がまっすぐ立っているように上を向いており、その美しいかたちからこの木はシャンデリアツリーとも呼ばれています。海外においては、パリのシャンゼリゼ通りがセイヨウトチノキの街路樹で、フランス名をマロニエといいます。(ロマンチストでなくてもパリのシャンゼリゼ通りの並木の下を一度はゆっくり歩きながらショッピングなどを楽しみたいものです。)このセイヨウトチノキは、実の表面に棘がある点で日本のトチノキと大きく異なります。葉も日本のトチノキよりやや小ぶりですが、オバケが手を下に垂らしたように葉が下を向いている点は共通した特徴です。
さて、このセイヨウトチノキの実にはサポニン、フラボノイド配糖体、アントシアニンなどの抗酸化成分、殺菌成分が豊富に含まれており、血液の浄化や血液循環の改善を促すはたらきがあり、収れん作用も併せもっています。したがって、セイヨウトチノキから得られるマロニエエキスは血行促進や引き締めの効果が高いといわれており、人体の組織間に沈着してしまっている老廃物に対して分解を促し、むくみを解消するはたらきがあります。マロニエエキスがデトックスやセルライト対策にも効果を発揮するといわれているのは、この根拠に基づくものなのです。
ところでヴェレダではアントロポゾフィー(人智学)を提唱したルドルフ・シュタイナーの思想に基づき、このセイヨウトチノキに対して次のような興味深い解釈をしています。それは、幹は上に、枝や葉は下向きに、そして実や花はまたまっすぐ上に向かうこの植物は、地球の重力に負けることのない強い生育力が宿っていると捉えており、このセイヨウトチノキには血行の促進、特に下肢の滞った血行を改善するはたらきに大変優れている、というものです。
余談ですが、霞ヶ関の並木では歩行者や通行車両の安全のために、硬くなった実が落下する前の8月に大掛かりなトチの実落としを行い、その光景はテレビのニュースなどでも紹介されています。落とされた実は自由に拾っていいので、実からトチ餅でも作ろうと思っている方は一度挑戦されてみてはいかがですか。ただし、前述したようにこの実にはサポニンなどの苦味成分がたくさん含まれているため、流水などに十分にさらす必要があり、食用という点では甘栗(英名:スィート・チェスナット)に比べて大味で、家畜のエサにも用いられたためか、セイヨウトチノキは馬栗(英名:ホース・チェスナット)とも呼ばれています。
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。
自然化粧品会社責任技術者 佐藤 博