
ミルラは、和名では没薬(もつやく)と呼ばれます。
日本人にはあまり馴染みがありませんが、エジプトでは古代に太陽神ラーへの薫香として正午の儀式のときに焚かれていました。
ちなみに朝、日の出とともに使われていたのはフランキンセンス=乳香とよばれる、ミルラと同じカンラン科の樹脂からとれるオイルです。確かにちょっとスモーキーな香りは少し頭を酔わせるような感じで、儀式や瞑想に適している感じです。また、ミイラを作るときには死者の内臓が腐らないようにミルラの防腐効果を活用して洗浄にも用いていたのです。
このことから実は、ミイラの語源はこのミルラであると言われています。旧約聖書の物語には、幼子イエスへの捧げものとして登場していますし、十字架にかけられたキリストにミルラをワインに混ぜたものを手渡したともされています。
中国では、少なくとも唐の時代(西暦600年)から、主に傷薬として用いられています(但し、中国のミルラと西洋のミルラとは種類が異なります)。 このように、ミルラは古代から世界中で広く使用していたものなのです。ご存知でしたか?
ミルラの原産地はアフリカですが、オイルは通常中東地方で生産されます。数メートルの高さの木の樹皮に傷を入れると黄色のガム樹脂がでてきますが、渇くとかたまりになり、粉砕して蒸留するとミルラ油が抽出できます。
ドイツの植物研究家のDietrich Gumbel氏による植物観察※では、樹脂のオイルというのは非常に治療効果が高いと言われています。というのは、植物における樹脂の働きは、「木に傷がついたときに樹脂がでて木自身を癒す」、これを人に適応すると「心身の傷を癒す」ことになるそうです。確かに実際に使ってみると、ミルラの肌トラブルに対する効果や、精神的な癒し効果には、素晴らしいものがあると思います。
その他、ミルラには呼吸器系の慢性的トラブルやストレスからくるトラブル、即ち咳・痰・気管支炎に効果的に働き、症状を鎮静させます。
最後になってしまいましたがミルラの効能として忘れてはいけないのは、ミルラは古くからお口の中のトラブルに使われており、歯肉炎や歯槽膿漏に、はちみつティースプーン1杯にミルラ油を2滴入れると、素晴らしい治療薬になります。
参考:Dietrich Gumbel氏による植物観察・・・
植物内でのある部所の働きは、人間に対しても同じように働くという考えをもって、植物を観察しています。例えば、葉は二酸化炭素を吸って酸素を吐き出しているので、消化・呼吸・循環器系に働き、木部や茎は支えたり運搬をしているので、人間に対しては泌尿・循環器系、また精神的な支えにもなる、という独特の考えです。
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。
英国ITEC認定アロマセラピスト 市川 恵美子