
イランイランはバンレイシ科の植物で、学名はCananga odorata。Canangaはインドネシアのアンボン島の現地名で、Odorataは芳香のあるという意味を持っています。その名の通りインドネシアを始め熱帯地方で採集され、「香料の木」として有名で、濃密で甘くエキゾチックでスパイシーな独特の芳香を放ち、オイルは古くから整髪料や香水などに用いられてきました。
イランイランという言葉は、マレー語で「花の中の花」という意味をもっています。インドネシアには、新婚のカップルが夜を過ごすベッドにイランイランの花をまき散らすという風習があり、これはイランイランの香りがムードを高める催淫作用があることからできた習慣と考えられています。
イランイランは熱帯性の木で20mほどの高さになり、肉厚がありビロードでコーティングしたようなピンク・藤色・黄色の香りのよい10cmほどの大きな花をつけます。この中でアロマセラピーに用いられるのは黄色の花で、朝早く摘んだ花を水蒸気蒸留法によりエッセンシャルオイルを抽出します。1回目の蒸留で最高品質のエッセンシャルオイルが抽出できますが、これは香料会社に買い占められ入手困難といわれています。次の抽出がアロマでの最高品で、更にグレードがあり、だんだんと深さや豊かさに欠けたものになります。通常、花から抽出されたエッセンシャルオイル、例えばローズ、ジャスミン、ネロリなどは、非常に高価で1ml(約20滴)で数千円もしますが、イランイランはその十分の一くらいの価格で「貧乏人のジャスミン」とも呼ばれていますが、上品な香りで実は高級な香水にも広く使われているのです。
テレビ番組で、入浴時に数滴使用すると美容に大変効果があると紹介されたことから、一時期女性の間で大ブームとなっていましたが、イランイランには皮脂のバランスを整える効果があり、脂性肌、乾燥肌のいずれにも効果的でお肌をしっとりと整えます。中世ヨーロッパでは育毛剤として広く使われ、頭皮の強壮・刺激作用があり、頭髪の成長促進にも効果的です。ホルモンバランスを整える働きもあり生殖器系のトラブル緩和や、催淫特性から性的障害の改善にも役立つエッセンシャルオイルです。
精神面に対しては、緊張や疲れをほぐしリラックスさせてくれます。寝る前の入浴で数滴お風呂に落としたり、寝室の中でバーナーで炊いたり、ティッシュに含ませて、夜のお部屋の香りづけにお勧めです。鎮静作用に優れているため、極度の緊張や、高血圧を下げる効果もあります。
但し、多量に用いたり、長時間嗅いだりすると、逆効果となることもあり、頭痛や吐き気に襲われることもあります。ある時アロマセラピーの授業で、「古くなったエッセンシャルオイルは肌に使用すると良くないので、芳香剤として使ったり掃除に用いたりして最後の1滴まで使ってくださいね。エッセンシャルオイルは植物の貴重な香りをもらっているのだから、我々人間は大切に使用する義務があるのですよ。」と生徒に話したところ、素直な生徒が拭き掃除にイランイランを用いて頭痛とめまいがしてしまった、という話があります。皆さんも、それぞれのエッセンシャルオイルの特性をよく理解して、そのオイルに合った使用方法をしてくださいね。
上記は植物の一般的な性質を述べたもので、化粧品の効能を示したものではありません。