今月中旬から2週間ほどの休暇を取り、西日本を周遊しております。
旅行のテーマの一つが安藤忠雄氏の建築物を見て回ることで、まずは茨木市の『光の教会』からスタート。教会の内部を見て、言いようのない深い感銘を受け圧倒されました(ちなみに小生は仏教徒です)。この教会は雑誌などでたびたび見ていましたが、実物は想像していたよりも小さめで、正面の打ち放しコンクリートの壁に上下左右いっぱいに十字架をイメージした、光が差し込む細長い空間があり、まさに天才のみがなしうる設計です。そのあと、かの有名な『住吉の長屋』、瀬戸内海の直島のミュージアム群などを見て回りましたが、『光の教会』のインパクトが強すぎたせいか、さほど印象に残りませんでした。なお安藤氏には『光の教会』の他、『風の教会』(兵庫県)と『水の教会』(北海道)の教会三部作があるようですが、前者はホテルの閉館に伴い見学不可、後者は今回の旅行ルートから外れていますのであきらめました。
しかし偶然読んだ週刊誌に少々気になる記事が載っていました。大阪梅田にある丸ビルは、かって「キタ」のシンボルと言われた建物なのですが、いつからか蔦の葉が絡まるようになって「てっぺんに届くにはまだだいぶ時間がかかりそうだな…」と傍を通るたびに感じていました。で、記事にはこの高さ120mの円筒型の建物を緑化しようと提唱したのが安藤氏であるが、この蔦がプラスチック製だとあり、複雑な気持ちになりました。「ホンマかいな…」と丸ビルに出向いて蔦の葉を見てみたのですが、下の階では本物の葉とプラスチックの葉とが入り混じっていますが、上方の4~6階の蔦は手で感触を確かめなくても日光の反射の具合ですぐにプラスチックだとわかります。安藤氏自身はプラスチックの葉は大したことではないとお考えのようなのが小生にとっては意外でした。
気分がスッキリしないまま四国に赴き、西条市にある安藤氏が設計したお寺(光明寺)を訪れたのですが、境内に入った途端、水に浮かぶような大きな本堂が目に入り、中に入ると格子越しに入る日光が祭壇を輝くように照らし出して荘厳そのもの。プラスチックの蔦のことなど、もうどうでもよくなってしまいました。
『光の教会』は暗さの中の光、『光明寺』は明るさの中の輝き、どちらもすばらしい建築作品です。 キリスト教と仏教の違いも反映されているのではないかと小生には思えました。