十日間ほどクレムスという、ワインとアンズで著名なところで休暇を過ごしておりました。クレムスはオーストリアのウィーンとリンツの間に位置するドナウ川沿いの街です。ワインが全く飲めない小生がこの地を休暇先に選んだ理由はヤツガシラです。
ヤツガシラは当地では絶滅の危惧に晒されている稀鳥で、体長20~25cm。写真のように胸と背がきつね色で翼と尾が白黒の縞なっています。一番大きな特徴は頭上の冠毛で、危険に際すると扇形に開きます。嘴は細長く少し曲がっていて地中の虫を啄むのに適しています。この一風変わった鳥に物心が付き始めたころから並々ならぬ関心と憧憬を抱いていましたのが家内でして、できることなら自然の中でヤツガシラを観察したいと長年思い抱いていたところ、昨年でしたかテレビで、クレムス近郊に住む家具職人が、所有するワイン畑にやってきたヤツガシラを見つけ、保護して孵化したヒナを育て上げ、秋に越冬でアフリカへ旅立たせてやったヤツガシラが翌年春に家具職人のところへ戻ってきたという感動ストーリーが放映され、「これだ!」と思い立った家内のたっての願いで今年のバカンスをクレムスに決めた次第です。
で、クレムスを拠点にヤツガシラが見れるという地域に焦点を絞り、崖地(写真参照)の穴に巣をつくるということでそれらしきところを連日あたってみましたが、そう簡単に見つかるはずもなく、地元の人に聞いても「よっぽど運がよくないと見られないよ」とのことで、ドライブ中に突然クルマのフロントガラスの前を横切って飛んで行った2羽のヤツガシラを一瞬見れただけでもラッキーだったと言わなければならないと思えてきました。そして休暇の最終日の昼過ぎ、諦めきれない家内とワイン畑の片隅にある木陰のベンチで休んでいましたら、たまたま通りかかった重そうなカメラ一式を抱えたカメラマンが話しかけてきましたので、ヤツガシラの話をしますと、「4時間も撮影をしたのでくたびれた。ちょうどいい。ヤツガシラの第一人者にクルマで迎えに来てもらうことにする」とケータイで電話。ほどなくしてその第一人者が登場したのですが、その人物がテレビのドキュメンタリーの主人公の家具職人だったので家内がビックリ。「なんたる幸運」とばかり矢継ぎ早に質問を浴びせると、「よかったら私が作ったヤツガシラの巣箱を見に来ないか?小屋でVTRを見ながら説明してあげるよ」と、えらく気さくな返事。クルマで数分のところに彼のワイン畑があり、ドキュメンタリーで映っていた小屋に通されて、家内はもう感激至極。ヤツガシラの話を飽くことなく続けていると、次第に小屋に人が集まり始め、よく話を聞くとワイン畑の真ん中でデモがあるというのです。なんでも村長が独断でワイン畑のど真ん中に観光客を呼び寄せるために仏舎利塔を建立しようとしたのに反対するデモで、地元のワイン農夫や住民、自然保護団体の方々、そしてもちろんヤツガシラの第一人者も大きなヤツガシラの幕を持ち込んで参加。よかったら一緒に来る?と誘われ、ヤツガシラを守るための集会ならもちろんということで参加してきました。このデモが実際どれほどの影響があったのかわかりませんが、ことの動向をネットで見守るつもりです。
今回は残念ながら自然の中でヤツガシラを見ることができませんでしたが、5月下旬が一番いい時期のようですし、来年改めて出向くことになりそうです。








