せんだってのコラムについて珍しく反響がありました。テーマは「女流指揮者」でしたが、ある方からメールで「日本ではかなり前に女性の指揮者が誕生しているし、中国愛楽楽団のティンパニー奏者は若い女性だった。西洋に比べて東洋の女性のほうが打つのが得意なのではないか?」というご指摘をいただきました。また別の方からは電話で叱責があり、「女性の胸には隆起があって指揮やシンバルに不向きなことぐらいすぐに分かるじゃないの、バカね!」と一笑に付されてしまいました。どちらのご意見も正当で再考の必要がありそうです。
女流指揮者はひとまずおき、今日は左腕指揮者について書きます。これもそうザラにはいないと思うのですが、いてもおかしくありません。その稀有な一人が以前のコラムで紹介しました、小生の属する「ど素人室内合奏団」の指揮者の一人です。しかしこれがどうもつかみどころがないのです。と言いますのは今でこそコントラバスを弾いていますが、かって糊口をしのいでいた小生の楽器がフルートでして、劇場の楽団では、狭いオーケストラボックスの中で指揮者からみて左手後方、第一バイオリンのうしろか、指揮者の右手最前列に座っていました。で、この席のおかげというか、そのせいで左目で指揮者を見て、右目で楽譜を見るという技を獲得したのですが、この高等技術が左腕指揮者の場合全く通用しないのです。これには驚き、かつ困りました。
つかみどころのない指揮者というのはけっこういまして、そのような場合は指揮者をみないでコンサートマスターの弓捌きをみるのが普通ですが、「ど素人室内合奏団」のコンサートマスターは、いかんせん弓捌きが極めて不明瞭で、これもつかみどころがありません。まさかコントラバスが第一バイオリンの後方や指揮者の右手最前列に陣取ることはできませんし、やむなく右目で指揮者を見て、左目で楽譜を見る、すなわち目の選定目的を逆にすることを試してみたのですが、どうもうまくいかない。ならば鏡を2枚譜面台にとりつけで指揮者を左右反対に見られるようにするという考えが浮かびましたが、かなり強固な譜面台が必要です。
しかしよくしたもので「ど素人室内合奏団」のレパートリーになるような曲のコントラバスの譜面というのはバイオリンなんかと違って甚だ大まかで、せいぜい八分音符までです。休止符もけっこうあって20小節休みというのがいくつかあったときにこの指揮者の顔を何気なく見つめていたのですが小節のアタマのところで目と鼻が大きく開くことにハタと気づきました。そしてそれからは指揮棒をではなく、この指揮者の鼻の開き具合をみることで「出」をしくじることはなくなりました。当の指揮者は「ボクの指揮棒をよく見てるのはあなただけだ。さすが元プロだけのことはある」としたり顔ですが、「いや私が見ているのは指揮棒ではなく、あなたの鼻です」ともいえず、シニカルな微笑みでごまかしています。








