先月、3泊4日で屋久島を訪れました。
かねてからぜひ行ってみたいと思っていた島でして「予備知識なしに白紙の状態で屋久島に行って自分なりの印象を認識したい」などと大見得を切っていたものの、さすがに一抹の不安は隠せず、小生の娘と親しい藤吉竜二・アキご夫妻のご厚意に甘えて屋久島での案内をすべておまかせしたのは大正解でした。大川の滝、西部林道、屋久杉ランド、横河渓谷などをご夫妻の解説およびドライブで回りましたが、すばらしい自然に圧倒され天候にも恵まれて期待をはるかに上回る日々を過ごせました。
屋久島では大きな感銘をいくつも受けたのですが、このコラムではその中の二つについて記したいと思います。まず屋久杉ランドへクルマで向かう途中の道端で、運転していた竜二さんが目ざとく見つけたのがマムシグサ。以前、このコラムで「マムシアルム」について記しましたが、アキさんがコラムを読んで、屋久島には「マムシグサ」があると教えてくださり、どちらもサトイモ科で毒性を持ち仏炎苞がありますので、何とか屋久島のマムシグサを見てみたいと思っていたところに出くわしたわけで、「何たる幸運」とばかりクルマを止めてもらってじっくり観察しカメラに収めました。

11月でしたので仏炎苞はありませんでしたが、スケールがまるで違うものの、実が緑から赤に色が変わる点はどちらの植物も同じです。左の写真の下の部分を拡大して右に示しました。まるで鎌首をもたげているマムシそのものですがドイツのマムシアルムはマムシを全く連想させません。学名ではマムシグサはサトイモ科テンナンショウ属でマムシアルムはサトイモ科アルム属ということで同科異属の近種といえるようです。
もう一つは蝶との出会いです。藤吉ご夫妻お気に入りの蝶で名前をアサギマダラといい、飛び方が何とも優雅な蝶がしばしば見れるところに案内してもらったのですが、着いて数分経ってその蝶が複数で飛来しました。確かにふわふわと風に吹かれて飛んでいる感じで普通の蝶とは飛び方が違います。そしてこの蝶は渡り鳥のように長距離を飛翔すると聞き、ご夫妻が知人からいただいたという標本を見せてもらって、「どこかでこの蝶を見かけるかもしれない」と思い、色と形をしっかりと記憶に留めました。そしてその一週間後、屋久島から遠く離れた紀伊半島南端の海辺(熊野市鬼ヶ城遊歩道)でこのアサギマダラに遭遇したときはさすがに驚きました。冬が近づくということで南下しようとしていたのでしょうか・・・

安藤冬衛の一行詩、「蝶々が一匹韃靼海峡を渡っていった」をふと思い出しました。