今日はエイプリルフールです。
語感からしてアメリカに端を発する風習と思われがちですが、そうではないようです。由来についてはドイツで諸説があり、16世紀にフランスの国王シャルル9世が1年の始めを4月1日から1月1日に変えたことが発端で、このことを知らないで4月1日を相変わらず新年として祝う人達をあざけることから始まったという説が一般的です。で、今回は小生がいままで聞いた中で一番傑作なエイプリルフールのジョークを紹介します。
随分前の、ある年の4月1日、ドイツのある地方新聞が『地元のビールから人体に有害な物質が検出』という見出しを太字でぶちぬいて第一面のトップに掲載しました。そして本文はおよそ以下のような内容でした。「…市の保健所の調査によると、地元ビールからエタノールという健康を害する物質が検出された。この物質は体内に入ると意識を朦朧とさせるので反応が鈍くなることがある。また摂取量が過多になると肝臓障害をひきおこし死にいたることがある。さらにこの物質には依存性を高める傾向が強い…」。
さあ大変。ビールの醸造元では朝から抗議の電話が鳴りっぱなし。電話の対応に出た専務が「初耳だ。何かのまちがいに違いない。弊社は長年ビールを製造しているが、エタノールなどという有害な物質が紛れこんでいるなどということは一度もなかった。早速調査を開始してこの件の解明に全力をあげる!」と大見得を切りましたが、この日スーパーでは、このビールの売上げが大幅に落ちこんでしまいました。
怒り心頭に達したくだんの専務は新聞社に厳重抗議をしたのですが、編集長と専務の間で以下のようなやりとりがあったようです。
編集長: 「おや、お宅のビールはノンアルコールでしたか?」
専務: 「何をくだらないことを言っておるのだ!」
編集長: 「エタノールはアルコールの別名ですよ」
専務: 「へ?…」
ここにおよんで専務はエイプリルフールの罠にまんまとハマったと気づいたのですが、時すでに遅し。翌日、新聞がこの専務との電話でのやりとりを報道し、この専務はとんだ赤恥を世間に晒すことになってしまいました。このコラムの聡明な読者におかれましては「アホかいな」とか「ホンマかいな」といった感想を持たれたことと思いますが、実際にあった話です。このエイプリルフールのいいところは、ウソをついて罠をしかけるのではなく、正論を述べながらの罠で、大げさにいえばレベルの高いエイプリルフールです。しかし見方によっては、相手の無知を見透かして揚げ足をとるような極めてタチの悪いエイプリルフールだということもできるかもしれません。
ウソでいっぱい食わせるエイプリルフールで面白かったのは、一昨年でしたかラジオが「スーパーチェーンの大手アルディが今日から格安のガソリンを販売することになった」と報じた時でした。真に受けたドライバーが大挙してこのスーパーに押し寄せ、交通がマヒしてしまいました。あわてた警察がラジオの交通情報で「アルディで格安のガソリンが販売されるというのは放送局のエイプリルフールです。みなさん、ひっかからないようにしてください」と報道したのですが、これを逆に「警察のエイプリルフール」と解釈した人がけっこういて、渋滞はさらにひどくなってしまいました。この罠にはたしかに上記のアルコールのようなタチの悪さはありません。
すでにお気づきかと思いますが、ドイツでは4月1日にマスコミでさかんにエイプリルフールの罠が仕掛けられます。この日はよほど注意していないと危ない。知人や友人のエイプリルフールには注意していても、新聞やラジオが仕掛けるエイプリルフールにまんまと引っかかる人が多いのはマスコミに信頼をおいているからでしょう。そこが先方のつけめなのですが…果して今年はどのようなエイプリルフールが出るのでしょうか…秀逸なものがありましたら、別の機会に紹介いたします。
最後に一言。今日は4月1日です。このコラムもウソのかたまりかもしれませんよ。