駄文コラムに終止符を打って丸一年経ちましたが、この間、旧読者の皆様方から思いがけなく非常に数多くのコラム再開の要望が寄せられ(口頭3件、電話2件、メール1件、封書0件、テレパシー数百件)、望外の喜びではありました。
小生、今年から拠点を日本に移し、しばしばドイツに戻っております。今回は再開号ということでそれにふさわしく、つい先週までドイツのカッセルという人口20万人の中都市で(日本で人口20万というのは小都市に分類されてしまうでしょうが、ドイツではれっきとした中都市です)催されていた、「Documenta」という超現代美術展について記したいと思います。
「Documenta」は1955年にスタートし、現在では5年毎に開催されている美術展で超現代モノを取り扱うだけあってとにかくユニークです。1980年代に最初にこの美術展を訪れた際、ふと「無題」と書かれた小さな天井の高い部屋に入ったのですが、確かに何もないし置いてありません。
なるほど、これが「無題」か…とわかったようなわからないような気分で、部屋を出る前にふと天井を見ますと実物大の犬小屋が屋根を下にして貼り付けられているではありませんか! 驚愕以外の何物でもありませんでした。見事に虚を突かれました。もし偶然天井を見上げなかったら、何もわからず通過しただけなのです…。
爾来、あまりに面白かったので毎回欠かさず「Documenta」を見るためにカッセルまで出向いているのですが…、ここ数回コンピューター芸術やらビデオなどが主流でつまらないと思いながらもあまり期待せず今回も出向いてみたら、予想に反して驚嘆の連続でした。
まず一番驚いたのが、直径2mはあろうかという大ダコのぬいぐるみ。どういうわけだか紫褐色ではなくグレーのフェルト製です。頭は垂れて足に付き、きわめてナチュラルな姿勢で、子供が抱いて遊ぶようなかわいさは皆無。あまりリアルなので凄みさえあります。そして8本足のうち5本ほどの先端が金属や合成樹脂で装飾されているのです。さらに吸盤は皆無。「はて? このタコはメスなのか?」などとくだらないことを考えていましたら同行の若い女性から「アホかいな!」と言われてしまったのです。それにしてもよりによって化け物ダコのぬいぐるみという発想がスゴい!
なお同行女性の一番のお気に入りは「エレクトリック・ドレス」。いろんな色がついた電球がついたり消えたりするドレスで日本人女性が50年前に制作したもの。実用性は皆無とはいえ50年も経つのに斬新さがまったく衰えないというのがすばらしい。「一度着てみたいな…」と彼女が思わずつぶやきましたので、今度は小生が「アホかいな!」と言い返す番でした。
あとはビックリ作品の枚挙にいとまがないのですが、極め付きは中国人Weiweiのテンプレーションという作品。建築ブームで取り壊された古い民家の玄関の戸を持ち込み、これらを積み重ねて高さ12メートルという大きなものを野外に創り上げたのはよかったのですが、展示して十日もたたないうちに突風によってあっという間に崩れ落ちてしまったのです。
主催者は「非常に美学的に崩壊した」と報じたのですが、「いったいどんな崩れ方だったのだ?」といいたくなります。当の芸術家は崩れ落ちた作品の残骸を見て「(崩壊する)前よりずっといい。立て直すつもりはまったくない。なにしろ神の手が加わったのだから…」とうそぶいのです。小生が見たのは残骸だけでしたが、戸の結合部の金具がちゃちで崩壊するのが当然といいたいほどの仕上げでした。なおこの芸術家は北京オリンピックの建物も担当していて、ドイツのマスコミから「こんなちゃちなものを創るヒトにオリンピック会場が建てられるのか?」というキビしい質問が浴びせられましたが本人は、「カッセルは芸術家として、北京は建築家として携わるので問題ない。アッハッハ!」と記者陣をケムに巻いていました。本当に大丈夫なのでしょうか? 来年の北京オリンピックはこの点についても興味深いものとなりそうです。








