1月早々よりドイツで仕事をしております。したがいまして今回のコラムはドイツ発です。
今回ドイツに来てみて、「変わったな」と思ったのは今年から主な州で始まった禁煙法です。 州によって内容が若干ちがいますが、要はレストランや飲食店では法律的に禁煙となり、みつかればかなりの罰金をとられます(州によって大きく違い5~1,000ユーロ、邦貨にして800円~16万円)。これは小生のようなタバコを吸わない者にとっては朗報で、以前はレストランに入って食事をして出てくると衣服にタバコのにおいがこびりついて不快な思いをしたものでしたが(特にイタリアン系のレストラン)、これがなくなりました。
ところが喫煙家にとっては一大事で、いろんな珍事が起こっています。その筆頭は宗教団体の結成です。北ドイツのカッペルンという町の、その名も「ネズミ捕り」という名前の居酒屋の亭主が考えついたもので、なんとキリスト・ユダヤ教会という名前の宗教団体を設立したのです。信者というか会員はすでに400名。宗教上の理由から喫煙するというのです。カトリック教会では乳香を香炉に入れて燻らせているのに問題はない。仏教には線香がある。ならばキリスト・ユダヤ教会はその向こうを張って乳香や線香のかわりにタバコを燻らせても問題はないはず・・・というお見事な見解。しかも宗教団体と名乗っているので、宗教の信条(註:たとえば「汝、喫煙すべし」など)は各人にとって自由で基本的人権でもあり、国家が干渉する筋合いはない・・・というのです。うーむ、いい着眼ですね・・・。しかしこれで禁煙法を免れるほど世間は甘くない。すでに州の厚生省は「そんな見解で禁煙法はごまかせない」と突っぱねています。他方、ある神父さんの意見では教会というのは信者数が人口の1万分の1以上必要で、さらに公共団体としての運営に100万ユーロ(1億6千万円)、教会としての規則も必要なので、この居酒屋の亭主の計画は無謀である、宗教の自由というとてつもなく大きな権利をもうすこし畏敬の念をもって把握することが望ましい…とのことです。そもそも乳香とタバコを一緒にすること自体が不届き千万なのです。そんなことには構わず、この居酒屋の亭主は役所に宗教法人の申請を行ったというのですが、役所がどういう返答を彼に出したのかは不明です。
禁煙法はドイツだけかと思っていましたらお隣のフランスでも今年から実施されているのにはいささか驚きました。フランス人やイタリア人といった南欧の人間というのはタバコを吸っているとサマになります。そのフランスで昨年12月31日24時をもってレストラン、居酒屋、カフェ、ビストロでの喫煙の自由はおしまい。が、当局は1月1日深夜まで…と丸1日大目にみることにしたらしいのですが、「まるで死刑囚が執行前に最後のタバコをめぐんでもらうようなもの」と感じた人が多いようです。見つかれば罰金が68ユーロ(11,000円)、飲食店経営者にも135ユーロ(22,000円)の罰金が科せられます。フランスのシンボルの「自由」はどこへ行ってしまったのかと嘆く声がしきりです。「サルトルはきっと墓の下でさぞかし憤慨しているであろう…さよう、サルトルとボーヴォワールはタバコとインテリ性を一体化したシンボルとして20世紀のフランスの文化を担ったイコンだったのだ。彼らは毎日、毎年、いや数十年にわたってCafe de Floreというカフェの2階で各々別の机で執筆し、話し合い、喫煙したのだ」ということなのです。この禁煙法が通る前にフランスの郵政省がアンドレ・マルローの記念切手を発行したのですが、土台となった写真ではタバコを燻らせていたのが切手ではタバコが消えていたとか、同じようなことがサルトルの展示会用のポスターでもあったとかで、そこまでやるか…という不満には強いものがあります。禁煙法がフランスの文化にどのような害を与えるのか…という論評はフランスならではと思いますが、禁煙法はどうやらドイツよりフランスでより深刻に受け取られているようです。
日本では路上禁煙はいくつかの都市で実施されていて、すでに罰金徴収が行われているようですが、飲食店での禁煙はどうなっているのでしょう?








