先だって山手線に乗っていて、列車内の英語のアナウンスで妙なことに気づきました。次の駅のアナウンステープがまず日本語で流れ、そのあと英語が続きます。で、目黒のアナウンスで日本語は当然、最初の「め」に大きなアクセントが入りますが英語ではどういうわけか「ぐ」に大きなアクセントが入り、なぜ英語も日本語発音と同じように「め」にアクセントを入れてアナウンスをしないのか考えてみました。
日本にいる外国人は、正しい日本語のアクセントを知りたいと思っているはずで、地名は特に重要な単語です。同じ地名を「めぐろ」のように日本人用発音と外人用発音に区別する意義はどこにあるのでしょう? 考えてもみつからず、あったとしてもたいしたことではなく、逆に外人を「いったいどちらの発音が正しいのか?」と混乱させるだけだろうと思っていましたら、英⇔独翻訳家の若いドイツ人女性が「あれはコンピューターで処理されているアナウンスじゃないかしら? 声も人間の声じゃなくて合成の声で、英語のテキストは正しい発音とアクセントでしゃべるが、英語にはない言葉、たとえば「目黒」なんていうのが出てくると、コンピューターが英語でそれに近い言葉を自動的に見つけ出し、そのアクセントでしゃべる……。だから「大崎」のように正しいものから「目黒」のように正しくないものまで、コンピューターが勝手にやるものだから、いろんなケースが出てくるのじゃないかな?」と発言したと聞いて、真偽はともかく「なるほど、そういうこともあるのか」と一人合点しました。他方、ドイツの列車では英語のアナウンスがつくのは国際線か特急ぐらいですが、テープではなく車掌の肉声です。ドイツの地名のアナウンスは英語の途中でもドイツ風発音です。ミュンヘンなどの英語の固有名詞がある都市はさすがに英語名を言いますが(ミュンヘン=ミューニック)、これもかなりドイツ語訛りがあり、聞いていてほほえましいぐらいです。
ドイツ語ではアクセントが重要です。目黒を例に出しましたので、ドイツの駅名を例に挙げます。日本人が多く住むデュッセルドルフですが、ドイツ語では最初のデュに大きなアクセントがかかり、残りは尻すぼみの発音です。日本語では逆にこのデュだけを弱くして残りを少しあげます。日本人がドイツで電車の切符を買おうと切符販売員に日本語的なアクセントで「デュッセルドルフ1枚」といってもまず通じません。ベルリンも同じでドイツ語ではベルリーンと発音してアクセントは長い「リ」にかかります。日本語では「べ」が弱くてあと少し音程が上がります。アクセントの位置を間違えるとさっぱり通じないということはしばしばドイツで経験してきました。
たかがアクセント、とおっしゃるかもしれませんが、日本人というのは案外アクセントについて寛容なのだと思います。だから外人が「メグロ」や「シンジュク」、「アサクサ」(下線部分アクセント)発音しても何とか理解できるのでしょうし、「へぇ、英語ではあのようなアクセントになるのか、なるほど…」と感心してしまうことはあっても、訂正しようということにはならないのです。








