バッハおよびバロック音楽の演奏にかけては世界一といっても過言ではないバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会を先だって川崎で聞きました。3月に「さいたま」(いつからひらがなで書くようになったのです?)でこのアンサンブルによる「マタイ受難曲」を聴いて大きな感銘を受けましたが、先月聴いたのは「ブランデンブルグ協奏曲全曲」でこれがまた10年に一度聴けるかどうかという名演と名解釈で圧倒されました。
まず解釈なのですが、演奏前に指揮者による楽器の説明があり、①レオポルト・モーツァルトの記述に「最近ではチェロを膝の間に挟んで演奏することもある」とあり、「だったら、それ以前はどういう弾き方だったのだ?」という疑問 ②協奏曲第三番ではヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各々3本という構成になっているが、現在のチェロではあまりにチェロの音が大きすぎる。以上2点を考慮して「ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ」という、当時よく演奏されていたという楽器を復元したものを演奏するというのです。おそらく初めての試みでしょう。チェロを横にして演奏するという説明がよく理解できず、「はて?」と首をかしげていましたら、奏者が楽器を肩から紐で吊るして胸の下部にほぼ水平に構えて演奏するのです。横というのは水平という意味だったのです。見事に意表を突かれました。楽器の大きさはヴィオラをひとまわり大きくそして厚くしたようなものでしょうか。そして何という柔らかな音色なのでしょう。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各々3本でありながら、このチェロ3本は決して出しゃばらず、調和のとれた申し分ないハーモニーが絶妙です。プログラムには「未体験の響きにご注目ください」とありましたが、たしかに未体験の響きで、目から鱗、耳からも鱗。このようなコンサートを聴ける至福にしばし、ひたっていました。
バロックといえば古楽器による少人数の瑞々しい演奏が最近では主流ですが、一昔前まではカール・リヒターが「マタイ受難曲」をフルオーケストラでシンフォニックな演奏を行っていました。最近では数年前にシュトゥットガルト室内合奏団による「ブランデンブルグ協奏曲」を地元で聴きましたが、全部現代の楽器によるもので、演奏もシャープで硬い。古楽器のようなやわらかさ、ふくよかさは全く出てこない。しかし古楽器を使いこなすのは極めて難しく、とくにバルブなしのトランペットでのこの協奏曲第二番の演奏は至難の技です。名人ぞろいのバッハ・コレギウム・ジャパンによるすばらしい演奏を堪能し、日本にいることの幸せをしみじみ感じた一夜でした。








