猛暑たけなわの日本を逃れ、涼を求めてドイツに滞在しております。この季節は音楽祭の季節でもあり、著名なのはなんと言っても真夏のバイロイト、ザルツブルクの音楽祭でしょう。これに比してさほど盛り上がらないのがウィーンの音楽祭で、このことを十分承知したうえで、ウィーン音楽祭は初夏、つまり5月~6月にかけて催されるのだろうと思われます。
今日のコラムはウィーン音楽祭のポスターについて記します。今年は音楽祭に先立って市役所の前で過去の音楽祭のポスターの野外展示会が催されていました。小生が大昔ウィーンにいたとき(1969~1979)はマジメなポスターが主流でしたが、最近はパロディ風になっていてとても面白かったのでいくつかの例を示します。写真(1)は1970年、つまり今からほぼ40年も前のものでタイトルの絵はむろんベートーヴェン(生誕200年記念でベートーヴェン一色でした)。当時としてはとても斬新なデザインが目を引きました。写真(2)は2006年でこちらはモーツアルト(生誕250年記念)ですが、白目をむいて口をゆがめています。この表情はウィーンの人間が「またかい?もうウンザリだよ…」といったときによくする表情です。このポスターを見て思わず大笑いしてしまいました。世界中でおそらく作品の年間最多演奏回数を誇るモーツアルトが、生誕250年記念ということでウィーン音楽祭のメインに取り上げられると聞いたら、おそらくこのような表情をするにちがいない…という設定なのでしょう。しかしこのようなポスターに許可を出した当局には保守的なウィーン市民から非難の嵐が押し寄せたことだろうと想像に難くありません。写真(3)は2005年度のものですがこれは解釈が難しい。なぜ犬が出てくるのでしょう…何がいいたいのでしょうね?「飼い犬に手を噛まれる」という諺なのでしょうか?よくみれば、男が左手で犬を撫でているのに、犬が噛みちぎったのは右腕です。そんな些細なことはどうでもよろしい。よくわからないポスターですが、見る人に首を傾げさせることを意図したものなら大いに成功したポスターといえます。

このほかにも意表を突くポスターがいくつかありました。毎年、ポスターが奇抜になっていくのはいいのですが、音楽祭そのものより、ポスターに人気が集まるのではないかと余計な心配をしています。でなければ過去の音楽祭のポスターの野外展なんてやらないのではないでしょうか?