あけましておめでとうございます。
お屠蘇気分に浸っている方も多いと思います。アルコールの考古学について興味深い記事を読みましたので、今年最初のコラムのテーマにいたします。
アルコールの起源はずいぶん古く、文字が発明されるはるか以前にあったことはまちがいありません。無論人間とアルコールの最初の出会いというのは偶然の要素が強いものだったと思われます。つまり地面に落ちて発酵が始まっているイチジクを深く考えることなく手にとって食べたところほろ苦い香りが口のなかに心地よく広がったといったところでしょう。以後アルコールの需要が急激に高まったのは自明の理であります。
アルコールが意図的に作られ始めたのは今まで考えられていたよりももっと古い歴史があるようです。黄河沿岸の発掘調査では器の小さな穴の中に酒石酸とミツロウが検出され、どうやら古代中国人は今から9000年以上も前から果実と蜂蜜から酒汁を作っていたらしい。さらに米が関わっていることがわかり、米を口に入れて噛み砕き、吐き出して甕に集めて発酵させるといういわゆる口噛み酒が作られていたというのです。これをゆうに1mはあろうかという、曲ったストローのようなものを甕に入れて飲酒するというのは今でも中国の一部で行われているとか。
穀物の栽培は今から11000年前とされています。米だけではなく小麦、大麦、トウモロコシ、キビなどの穀物が栽培されたのは主にアルコールを作るためだったという新説があります。考古学者の間では長い間、パンが先かビールが先か議論されてきたのですが、McGovernという学者によれば原始人は複雑なビールの醸造をこなしていなかった。また野生の穀物の殻と実を分別するというのは多くの労力を強いる仕事で、パンを焼いても殻がたくさん入り混じってうまくいかなかったはずである。ゆえに穀物からはまず果実酒と蜜酒の合いの子のようなものが作られ栄養価が高いので農民に食されていたのであろうというのです。興味深い説ですね。
そして上記の学者はさらに原始ビールをイランの先史時代の集落で初めて認めたようです。まず彼が発見したのは下部が膨らんでいて開口部が大きな甕で底には縦横に刻み目がある。最初、謎の碑文かと思われたのですが、分析してみると蓚酸カルシウムが検出された。この物質はビール醸造の際に出る好ましくない副産物で、今日では問題なく濾過して除去されるのですが、紀元前3500年ではそうはいかない。で、当時の創意に富んだ祖先は50リットル入りの甕に刻み目を入れて蓚酸カルシウムを微細な結晶をそこに沈積させた。このようにしてこの学者は最初の原始ビール甕に出くわしたのです。
ところでワインの瓶が上げ底になっていることにお気づきですか?あれは酒石を上げ底の底部に沈澱、集積させるためのものです。無論、現在ではワインも充填される前に濾過されるのですが、ごくたまに酒石が出ることに備えてのことなのでしょう。他にも上げ底の理由があるのかもしれませんが、紀元前3500年のビール甕の刻み目と現在のワイン瓶の上げ底に5000年を超えた共通項があるように思えてなりません。








