あけましておめでとうございます。今年の干支は兎でして、兎が出てくる童話で有名なのは日本ではイソップの「兎と亀」でしょうが、ドイツではイソップの童話はほとんど知られておらず、もっぱらグリム童話です。グリム童話で似たような童話に「兎と針鼠」があり、針鼠が一計をめぐらして高慢な兎に走り勝つのですが、童話に出てくるぐらいですから針鼠はドイツの森や野原、農家の庭などにたくさんいます。しかし非常にシャイな動物で普段は茂みや木陰に隠れていますので見つけようとしてもそう簡単には見つからないのです。
その針鼠が瀕死の状態でいるのを家内が借家の庭で発見。11月下旬の大雪が降る直前のことだったと思います。ダニに喰らい付かれ、多数のノミに取り付かれ、さらに呼吸器官や消化器官も病原菌に侵されている様子で、おまけに秋に生まれたばかりのようなので冬眠する体力も皆無。ほっとけば死んでしまうことは確実…ここに至って小村農家出身の家内の義侠心に火がついてしまいました。獣医に診断させることに端を発して、地下室に長さ200cm、幅100cm、高さ50cmの箱を小生に作らせ(インターネットで調べると一匹の針鼠が必要とする最低限の大きさらしいです)、定期的に赤外線ランプを当てて暖をとらせ、毎晩のように栄養食をつくってやり、いたるところで糞尿を撒き散らすのでこまめに清掃してやりと、もう完全に針鼠に振り回されています。そしておよそかわいいとはいえない針鼠にぞっこん惚れ込み、生態や振舞いを詳しく観察して針鼠日記をつけ始めました。そして拾い上げてから6週間経って針鼠の体重が倍ほどになり、『作ってやった段ボールの家の中で冬眠し始めるのでは?』と淡い希望を持ったのですが、「毎晩ごちそうにありつけるのに冬眠するほど針鼠はバカじゃないよ」と友人に一蹴されてしまいました。
しかしこの体験を通じて針鼠の意外な習性がわかりました。①聴覚と嗅覚はよく発達していますが視覚はかなり劣ります②手袋をして持ち上げるとさらに針をとがらせ手足をバタつかせますので危険ですが手袋の掌の中で背中を下にしてみると全身がほぼ球状になり、鼻や前足の先端を除いてすっぽりととがった針のなかに隠れてしまいます。面白い③いり卵が大好物。煮抜き卵は卵黄部分しか食べない④家内がよく声をかけていますが、犬猫と違い、相手は野生の動物です。絶対になつかない!
この調子では春が来るまで針鼠の居候が続きそうです。そして春に自然に帰してやるといっても、すぐに自分で昆虫やミミズを探して食することができるとは思えないのですが、どうなのでしょう。同僚に一冬の間、馬小屋で越冬させて餌を与えていたのがいるのですが、この人によれば、春のある日、突然いなくなってそれっきりだったといいます。針鼠の本能を信じて春先に放り出せばいいのかもしれませんね。








