目下ドイツで大きな話題となっているのがバイオガソリンです。
1970年代のオイルショックの影響で、ガソリン節約の観点からアルコール(=エタノール)が添加され始めましたが、爾来アルコールの配合量はドイツでは5%です。そのドイツで今年初めからバイオガソリンが販売され、これには10%のバイオアルコールが配合されていてガソリンスタンドの給油器にはE10と記されています。「バイオ」と接頭語があるのはエタノールが穀物、甜菜、砂糖黍など植物由来であることを指しているだけで、残りはガソリン、つまり化石燃料で、バイオではありません。日本でもバイオガソリンはあるようですが、バイオアルコールが3%配合されているもの(E3)と、ETBEといってバイオエタノールのほかイソプテンというやっかいな物質が入っているものがあり、ドイツのバイオガソリンとは異なります。しかしいずれのバイオガソリンも目的は「炭酸ガスの排出と石油の需要を抑える」ということで同じです。
で、このE10、石油会社が十分な情報をマスコミなどに流さないままドイツ市場に導入してしまいました。ドイツのクルマの9割以上がE10を燃料とすることができ、価格も1リットル当たりおよそ10円安価で、しかも環境によいということで政府はE10の消費がE5よりはるかに多くなるとタカをくくっていたのです。
ところが導入してまもなく自動車メーカーが「E10はモーターによくない」と言い出し、これがドライバーのE10に対する不安心を煽り、大半のドライバーが相変わらず従来のガソリン(E5)を給油していて、E10の売り上げが全く伸びません。隣国フランスでは2年前からE10が導入されていますが、全燃料に対するE10の売上比が昨年度で13%でと不本意なデータが出ています。スイスではそもそもアルコールを添加しようという動きさえありません。
バイオアルコールの原料となる植物ですが、ドイツでは60%がEU(=ヨーロッパ共同体)の穀物由来、30%がEUの甜菜由来、そして残り10%がブラジルのサトウキビ由来となっています。非難の対象になっているのがサトウキビで、食物となるべきものがバイオガソリンの製造に使われれば飢饉の原因になり、さらにこれらのサトウキビを多く栽培するために熱帯雨林の樹木が伐採されてしまうという見地から環境保護団体から抗議を受けています。しかしバイオアルコールが登場した背景には90年代のEUにおける穀物の過剰収穫があったのです。過剰の穀物を高い補助金を出して後進国へ輸出するよりは、自国でこれらの原料をもとにバイオエタノールを作り、ガソリンに配合するほうがいいと考えたのです。
ところでガソリン中10%のアルコールがどれほど炭酸ガス排出を抑えることに役だっているのでしょう…環境問題にさほど貢献できているわけではないように見受けます。そして2007年に催された農業学会での発表に「1トンの穀物から400リットルのバイオエタノールが得られる」という報告がありますので、ドイツで小型乗用車を一回満タンにするのに50リットルのバイオガソリンを給油すると仮定すると、一回の給油に約12kgの穀物が投入されることになります。上記の飢饉問題が討論される道理です。
バイオガソリンが炭酸ガスの抑制、化石燃料の節約だけではなく、食糧危機、密林保護などといった問題も抱え込んでいるということで、今後のバイオガソリンについての各国の対応対策をじっくり見守ることにしたいと思います。








