過日、家内と山陰地方を旅行しました。小生は山陰地方が好きです。何か経済発展から取り残されたような印象を受けますが、そのことがかえって地方の昔のままの姿を今に伝えることができ、風情のある街がいまだに多く残っているのではないかと思います。
で、鳥取から松江に入ろうと思い、特急スーパー『おき』に乗車すべく、駅のホームで待っていましたら、二両連結のぱっとしないディーゼルカーが入ってきました。どうみても近郊を走る各停といった風情ですので、「まさかこれが特急スーパー『おき』ではあるまい…延着かな?次の列車を待とうか…と思いながらふとホームの電光掲示板をみると停車中の列車が「スーパーおき」だと告げています。慌てて飛び乗ったのですが、冷や汗が出ました。ディーゼル二両に「特急スーパー」などという大仰な名前をつけなくてもいいだろう…と文句をいいたくなったのですが、そういった固定観念は勘違いの元凶である、かような特急が山陰の特急なのだと考えなおすに至りました。
翌日、松江からまたもやディーゼル二両編成の特急スーパーで大田へ向かい、バスを乗り継いでかねてからの念願であった石見銀山を訪れました。本来なら二時間半の健脚向き『大久保間歩(坑道)ツアー』に参加するつもりだったのですが、家内が風邪気味でしたので予定変更。散策によいといわれる遊歩道をゆっくり歩くことにしました。バス停「大森」から歩き始めると、ほどなく自転車通行止めの遊歩道の入り口となり、竹藪の多い周囲によくマッチした小道が現れました。さらに歩きますと、梅の花が咲き、小川には小さな魚が泳ぎ、ところどころに荒れた墓跡が見られ、寺院や神社もあって、非常によく考慮して作られた遊歩道です(写真①)。感心しながら歩いていましたら、後方からボランティアのガイドを個人でなさっている三代侑(みしろすすむ)さんという方に話しかけられました。「よろしかったらガイドしますが…」とおっしゃるので、お願いし、精錬所跡(写真②)や龍源寺間歩(写真③)を案内していただき、いろいろと興味深いお話をうかがいました。家内が銀の製錬法や鉱石の種類について、随分こみ入った質問をしたのですが、丁寧に答えていただき、このような専門的な質問はふつうの団体ツアーではできなかっただろうし、また十分に答えていただけないだろうと思うと、偶然とはいえ短時間でしたが三代さんに解説していただけたのは幸運でした。
三代さんはガイド協会のような組織には属さず、あくまで個人でボランティアガイドを行っておられ、謝礼は一切受け取らず、間歩の入場料も自分で支払うという徹底さ。しかも個人で作成された石見銀山のDVDを興味のある方に無償で提供されていると聞いて、この方は石見銀山をこよなく愛する、真のボランティアの郷土歴史家だと感じました。ドイツにもどってじっくりDVDを見ましたが、三代さんがYouTubeに投稿なさった13の短編をまとめたもので、「素人が作成したものですから…」と謙遜なさっていましたが、ご本人のナレーションと郷土歴史家が見た石見銀山の全貌とが相俟って、「手作り」の温もりのある、とてもいいDVDになっています。
石見銀山は間歩、精錬所跡、城跡のみならず自然や環境もよく保存され、世界遺産に登録されてすでに5年になります。三代さんは海外、とくに欧米からの観光客が石見銀山を訪れることを切望しておいでです。いただいたDVDを当地の友人や知人にみせて、石見銀山のすばらしさを伝えることで、少しでも三代さんのご厚意に報いることができればと思っています。








