10月に入りめっきり秋らしくなってきました。今回はつい最近まで庭先に飛来していた蛾について記したいと思います。
蝶と蛾の違いについて訊かれたら、「蝶は昼、蛾は夜に飛ぶ」と答えるのが普通だと思いますが、家内に訊きましたら「蝶は色がきれいで蛾は色がつまらないというか退屈だ」という珍答が返ってきました。「退屈な色とはなんだ?」 「蛾って大体薄茶色ないし茶色で面白くない、つまり退屈」 「蛾は夜、飛ぶのだから色なんてどうでもいい」 「蛾は夜飛ぶとは限らないよ。昼間に飛ぶ蛾もいるよ」 「いるかもしれないけどごく少数でしょ」と、極めてくだらない論争をしていましたら庭先の花にどうみても蛾としか思えない妙なものが飛来しました。家内が得意げに「それみなさい。言ったとおりでしょ。これは昼に飛ぶ蛾でTauben-schwaenzchen (学名:Macroglossum Stellatarum) というんだ」と蘊蓄を傾けてくれました。この蛾は和名をホウジャク(蜂雀蛾)というようで、訪れた花はシュッコンヴァーベナ(学名 Verbena Rigida)で非常に小さな花をたくさんつけ、いろんな種類の蜂や蝶が蜜を求めて飛来します。
ホウジャクは胴体が他の昆虫に比して大きいからか、あるいは長い吻管を持つからか、蜂や蝶にようにじかに花に止まって花蜜を吸い上げることをせず、素早く羽ばたいて空中静止をしながら吻管 (写真参照) を花に差し込んで吸蜜します。カメラに収めてしばし見つめていたのですが、ふと『どこかで見たような気がするな・・・どこだったか・・・』と記憶を辿り、数年前に月見草の資料を収集していた時に、このホウジャクのことを記した文献に出くわしたことを思い出し、再び資料を引っ張り出して確認しましたら、ホウジャクは長い花筒を持ち月見草を好んで訪花して花蜜を採るとありました。写真も載っており、当時はこの蛾を一度見てみたいと思っていましたが、月見草の開花は夜の帳が降りてからですので、夜目の利かない小生にはおよそ見る機会はあるまいと考えてそれっきりになっていました。
そのホウジャクを日中目の当たりにしたわけですから、半信半疑だったのですが家内の指摘により、このホウジャクが昼日中にも飛行することが判明しましたので、次の日からくわしく観察するようになり、午前午後を問わず頻繁にやってきては吸蜜しているのを見て、「次から次へと小さな花をせっせと飛び回って蜜を吸っているが、体が大きいから必要量を確保するのは大変だろうな・・・月見草なら花が大きいから蜜も豊富だろうしさほど飛び回らなくてもよさそうなものだが昼夜飛び回るのもキツいな」と余計な考え事をしてしまいました。
話を元に戻しまして蝶と蛾の違いですが、日本語では蝶と蛾を漢字ではっきり区別します。ドイツ語では蝶をFalter(あるいはSchmetterling)、蛾をNachtfalter と言いますが、蛾のこともFalter という人もいましてかなりいい加減です。Nachtは夜という意味ですのでNachtfalter を直訳すれば夜蝶となり、蛾は夜現れるものと思うのは普通でしょうが、普通ではない家内(農家出身+田舎育ち=昼の蛾を認識している)の珍答もあながち悪くはないと思えました。








