先週末、スイスのバーゼルに出向いて、ごく親しい友人の誕生日パーティに出席した翌日、ライン川を渡ってドイツ側にあるヴィトラ・キャンパス(Vitra Campus)を訪れてみました。ヴィトラというのはスイスのデザイナー家具のトップメーカーで、その工場敷地内には斬新な建物や施設、そして敷地外にはミュージアム、ショールームなどがあり、これらを一括してヴィトラ・キャンパスと呼んでいます。
で、まず否応なしに目につくのがミュージアム。建物自体は脱構築主義(Deconstructivism)建築の旗手フランク・ゲーリー(Frank Gehry)の作品です。デュッセルドルフのゲーリー建築群も著名ですが、一戸建てでも強烈なインパクトがあります。

工場敷地内はガイドなしでは入れないのでガイド料13ユーロ(約1800円)を払って入場。どれも見ごたえのある建築物ばかりですが、2つだけ書き出してみます。最初に圧倒されたのが一番新しい工場-というよりは内部を少し見ただけでは倉庫といった感じの建物でした(下の写真参照)。入荷出荷用のトラックの出入口がたくさんあり、遠くからみると白いカーテンが掛っているようで軽やかな感じです。間近にみるとこれが白いプレキシガラスなのには驚きました。日本の建築事務所SANAAの作品です。

次のビックリは消防署です(下の写真参照)。かって工場敷地内で大きな火事があり、建物の大部分を焼失したことを踏まえて、自社の消防署を敷地内に建てたわけです。建物はこれも脱構築主義建築で女流建築家ザハ・ハディド(Zaha Hadid)の作品。同じ脱構築主義建築でも上記のミュージアムとはまた違った趣で機能的な印象を受けますが、およそ消防署には見えません。内部も消防車が5台入る大きな車庫の他、消防士用の更衣室、シャワー、談話室などの設備が整っていて本格的ですが、現在では展覧会やイベントの会場として使用されています。

ガイドのしめくくりは安藤忠雄氏作の会議館。脱構築主義建築を見た後のミニマリズム建築は畳サイズの打ち放しコンクリートと相俟って極めて新鮮に映りました。
約1時間半のガイドが終わった後はショールーム館へ。外から見るとずいぶん複雑に入り組んだ建物ですが、それもそのはずで12の切妻造りの家が5階建の複合建築物となっていて中にはショールームや喫茶店、土産物店が入っています。ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)という2人の建築家の作品で、このコンビは初期には簡素な箱型の建築物が多かったのですが、現在では作風が複雑化しています。内部も複雑で、一度見た箇所をもう一度見ようと思っても方向がわからなくなり、見つけるのに苦労しました。
写真の街灯2基、とても面白く、見方によっては灯りの部分が顔に見えます。同行の知人は『タンゴを踊ってるようだ』と言い、もう一人は『抱擁しあってるように見える』と言い出して、受ける印象は人それぞれ。計4人でこのミュージアムを訪れたのですが、街灯だけではなく、建築物についても意見や感想を述べ合うことができ、楽しい日曜日でした。
