イヌカミツレとノラニンジン

先回のコラムで、ヒナゲシを取り上げましたが、今回はまず最近穀物畑でよく目に付くカミツレ(カモミールという名称も日本ではよく使われますが本コラムではカミツレに統一します)について記すことにいたします。

大麦が頭を垂れても赤いヒナゲシは相変わらず目立ちますが、白いカミツレも色だけでなく背丈も高く数も多いので今のところ存在感ではカミツレの方が上です。なお上下の茶色の部分は大麦ですが、緑の部分は小麦です。どういうわけか雑草がよく目立つのは大麦畑だけで、小麦畑には皆目といっていいほど見当たりません。その代わりトラクターの轍が随所に見られました。どうやら雑草除去剤をふんだんに噴霧したように思えます。

話をカミツレに戻します。家内は「大麦畑のカミツレはイヌカミツレという雑草で、ハーブとして著名なカミツレはジャーマンカミツレ。両者は見ただけでは区別がつきにくいが、穀物畑に生えているのはイヌカミツレと考えてまず間違いない」と断言。さらに「ウソだと思うなら、花を縦に切ってみたらわかるよ。ジャーマンカミツレは中心部が空洞になっているんだけれど、イヌカミツレは詰まってるんだ」と説明が続き、そういえば昔誰かにそう教わったことがあったなと思い出しました。花を手折って家に持ち帰り、ナイフで縦に切ってみましたら確かに中心部は空洞ではなく、詰まっていましたのでやはりイヌカミツレだと納得しました。

もう一例、紛らわしいハーブを挙げます。穀物畑の中ではなく、畑の縁に白く小さい花を咲かせるハーブにセイヨウノコギリソウがあります(ヤロ- yarrowという英語名の方が知名度が高いようです)。

左がセイヨウノコギリソウ、右が和名不詳の雑草です(学名:Chaerophyllum)。「葉を見ればすぐわかる、和名のノコギリソウは言い得て妙だ。葉がギザギザになってるもんね。」とは家内の弁ですが、右の葉にもギザギザがあります。両者を写真のように隣同士に置けば花の大きさと密集度の違いがすぐに分かりますが、ハーブに疎い人間にとって100m離れていると、そうはいかないです。
そしてこの二つの植物からさらに離れたところに小さな白い花を咲かせている植物を家内が目ざとく見つけ、「この植物は面白いよ!ワイルドキャロットというんだ。葉を擦るとニンジンの匂いがするよ」といいながら小生の鼻先に擦った葉を突きつけてきます。「よくわからない。かなり繊細な匂いのようだ・・・」と答えましたら、この植物を根こそぎ引っこ抜くよう命じられました。従ったのはいいのですが、根がどうしても抜けません。「ダメだ。できないよ。しっかり根を下ろしているようだ」と言いましたら、農家出身で気も力も強い家内は「じゃ私がやる」というが早いか、根を引き抜きました。どうやらコツがあるようです。だったら最初から自分で引っこ抜いてくれればよさそうなものですが、まずは「亭主のお手並み拝見」を決め込んでいたようです。
家内が豪快に引っこ抜いたのは地上部が1m、根は15cmで根は細く白く、はっきりとニンジンの匂いがします。花は白いですがノコギリソウの花とはかなり違うのは素人眼にもよくわかります。

このワイルドキャロットにはノラニンジンという、ちゃんとした和名があります。どこかでお聞きになったことありますか?ノラは漢字ではおそらく野良と書くのでしょう。野良仕事につながり、野生(ワイルド)よりもしっくりきます。現在一般に食されているニンジンの原型ということで、根は野菜、葉はスープのスパイスとして用いることができるようです。