6月最初の日曜日の午後、ドイツとフランスが共同出資するテレビ局のアルテ(Arte)でベートーヴェンの交響曲の連続演奏会がありました。このテレビ局はメインに文化番組を据えていまして、音楽番組も充実しており、小生のお気に入りのテレビ局です。当地の音楽シーズンは例年大体10月から翌年6月で、昨年12月はベートーヴェン生誕250周年でしたので本来ならそれこそベートーヴェン漬けのシーズンとなるはずだったのですがコロナのせいでコンサートが悉く中止となり、来シーズンにベートーヴェンを改めて取り上げるという話もありましたがコロナの収束が条件ですので実際そうなるかどうか不明です。
そこでアルテが、いかにもアルテらしい音楽番組を作りました。ベートーヴェンの交響曲全曲を1番~9番の順にライブ演奏。おまけに1番は午後1時、2番は午後2時、そして最後の9番は午後9時に実況放映でなかなか芸が細かい。そしてオーケストラと演奏都市は1番のボンから始まって(ベートーヴェンはボンで生まれました)ヨーロッパ各地を回って9番はウィーン(ベートーヴェンは全交響曲をウィーンで作曲しウィーンで亡くなりました)で終了。クラシック音楽愛好家の皆様用に一覧表を作成しましたので以下に付記いたします。
ベートーヴェンの交響曲は9番を除いていづれも演奏時間は1時間以内(9番は演奏時間が約70分)ですので余った時間には「エグモント」や「コリオラン」の序曲、演奏曲目の解説、指揮者のインタビュー、演奏会場の街並みの紹介などを入れ、また演奏中にも各種舞踏を映したりして9時間余りの長時間番組を退屈させません。演奏も個性があってそれぞれの特徴がよく出ていましたが、7番がダントツで面白かったので少し詳しく記します。
指揮者クルレンツイスとムジカエテルナ合奏団はすでに一昨年日本で演奏会を行っていますのでお聴きになった方もおいでかと思いますが、古楽器を使用しているにもかかわらずとても斬新な演奏が特徴です。テレビでは演目が7番ですので午後7時から放映が始まり、ギリシャ人の女性アナウンサーが演奏者(クルレンツイスはギリシャ人です)の紹介および演奏会場の解説。まさか古代ギリシャの劇場の遺跡でコンサートをやるとは思いもよらず、音が散ってしまってしまうのでは…と危惧したのですが、ちゃんとマイクに収まっていました。そういえば古代ギリシャの劇場はすり鉢状の半円形で音響効果は非常に優れているという説をどこかで聞いた覚えがあります。このギリシャ遺跡でのコンサートのインパクトは強烈でした。ビデオのリンクを記しておきます。
https://www.arte.tv/de/videos/103198-001-A/beethoven-symphonie-nr-7/
※ドイツ国内でのみ再生可能です。
もうひとつ記したいのはウィーンのベルヴェデーレ宮殿庭園に於ける9番の演奏です。9時に始まったころは夕焼けでしたが4楽章が始まる頃はとっぷり日が暮れていました。1番から8番まで男性指揮者ばかりでしたら、9番もおそらくそうだろうと考えていましたら、颯爽と登場したのが若手のアメリカ人女性指揮者。最後の大曲の指揮者に女性を起用するというのが秀逸のアイデアです。そしてこの指揮者、非凡です。今まで聴いた女性指揮者の中で一番優秀だと思えました。リンクは以下のとおりです。
https://www.arte.tv/de/videos/094540-001-A/beethoven-symphonie-nr-9/
※ドイツ国内でのみ再生可能です。
コンサートは演奏家と聴衆が一体となってこそ価値があるものです。来シーズン、ナマの演奏を耳と眼と肌で感じ取れることを願うばかりです。
(2021年7月)









