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ヌレエフ(Nureyev)

11月最後の日曜日にグミュントから西へおよそ100km離れたところにあるプフォルツハイム(Pforzheim)という街に出向いて、新作舞踏劇「ヌレエフ」を観てきました。

ヌレエフ(1938~1993)というのはニジンスキー(1890~1950)の再来とみなされていた著名なダンサーで、波乱に満ちた人生を送りました。
生まれたのはイルクーツク近郊を走行中のシベリア鉄道の列車の中で、家族はウラジオストックに兵士として駐在中の父親のところに行く途中だったというところからして劇的です。15歳でウファの劇場に出演し17歳でキーロフ・バレー入団。パリ公演中にソビエト連邦からの劇的な亡命を果たし、ウィーン、パリで名声を確立。エイズに罹患し1993年パリの病院にて54歳で死去。
映画「白いカラス 伝説のダンサー」(2018年)はヌレエフの半生を描いた作品で日本でも上映されていたようですのでごらんになった方もおいでかと思います。現在、バレエのメッカはロシアでその次がフランスということになっていますが、この背景には19世紀後半のチャイコフスキーのバレエ音楽や20世紀前半のドビュッシーやストラヴィンスキーのバレエ音楽が大きな役割を果たしていると思えます。ドイツではバレエ音楽は不毛でしたが舞台ではバレエが上演されることは多く、ベルリン、シュトゥットガルト、ハンブルクのバレエ団が著名です。

で、プフォルツハイムの「ヌレエフ」ですが前半後半各々8個のシーンに分けられ、第二次大戦/出生から死の最終シーンまで、20人ほどの舞踏家によってストーリーが展開され(主人公のヌレエフの他母親、白鳥(愛)、孔雀(ミューズ)などが登場します)、オーケストラがオーケストラボックスでそれぞれのシーンにふさわしい曲を演奏し(たとえばチャイコフスキーの「白鳥の湖」の情景やドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」など)、ヌレエフの魂の描写が舞台の上でチェロのソロによって奏でられたのは非常に効果的でした。斬新な演出と振付が新鮮で、クラシックバレーを好まない小生でも十分堪能することができたのは大きな収穫でした。

プフォルツハイムは人口約12万人の都市です。決して大きいとは言えない街に「3部門劇場(Drei-Sparten-Theater)」つまり音楽劇、演劇、舞踏の3部門の演目を催すことができる市立の劇場があり、オペラ歌手、舞台俳優、舞踏アンサンブル、オーケストラ、合唱団など、合わせて100人以上の芸術家が在籍しています。劇場は観客収容人員数500人と小規模ですが築30年と比較的新しく、舞台の奥行きもあり、観客席に死角はありません。ほぼ毎日、何らかの上演があるとはいえ、これでよく経営が成り立つものだと感心するのですが、やはり市立だからでしょう。

11月、グミュントでは全く雪が降りませんでした。今住んでいる家に引っ越してきて丸10年になりますが記憶にない事態です。広葉樹の落葉も目立たず暖冬となりそうです。(2022年12月)