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バイエラー財団美術館(Bayeler Fondation)

1月最後の週末を利用してバーゼル在住の娘一家を訪問した際、バーゼル近郊にあるバイエラー財団美術館を訪れました。
バーゼル滞在中はできるかぎり、この美術館に足を運ぶことにしていまして、バーゼル中心部からトラムで約30分ほどのところの郊外にあります。
バーゼルの美術商バイエラー夫妻のコレクションを展示していまして、近代および現代美術の作品が中心です。なお美術館は著名なイタリア人建築家レンゾ・ピアノが設計したもので、建物としても超一流です。

アンリ・マティスの作品では「青い裸婦 I」(1952年)と「アカンサス(ハアザミ)」(1953年)が展示されていました。アカンサスは初めて見ましたが、色の配合が見事です。

変わったところではレイチェル・ホワイトリードのポルターガイスト(Poltergeist)がありました。

ポルターガイストというのはドイツ語ですが英語でも通じるのでしょうか、英和大辞典で調べましたら同じスペルで『ポルターガイスト;ドイツなどの民話に出てくる音の精で不思議な音をたてたり、家具をひっくりかえしたりするとされる』とあり、ついでに独和大辞典を引いて見ましたら『家の中でゴトゴト音をたてる騒霊:ポルターガイスト』と出ていまして、日本語でもポルターガイストで通じるとは知りませんでした。いかにも騒霊が出てきそうな家です。この作品の素材はトタン板、ブナ、松、オーク、家庭用塗料と記されていました。

ジェフ・クーンズの「Titi」は先回この美術館を訪れたときにも見ましたが、今回も同じように強烈なインパクトを受けました。どこから見ても空気の入った金色に輝く風船にしか見えず、「素材はステンレス鋼で透明な色のついた釉が施されている」という説明を読んでも信じられません。

よく見ますと表面には展示室の天井や作品を見つめている人々が反射されていて風船でないことはわかりますが、金属製と言われても違和感が募るばかりです。

企画展ではコロンビアの女流アーチスト、ドリス・サルチェードの大作「Palimpsest(パリンプセスト)」

がこの美術館最大の展示室(400㎡)に置かれていました。パリンプセストとは『書いたものを消した上にまた書けるようにした古代の羊皮紙』のことですが、新しく記した文字の下には古い記述がある程度残ります。
この作品では中近東やアフリカなどの故国における暴力、拷問、脅迫に苛まれて西欧へ逃亡中に地中海で非業の死を遂げた避難民の名前が66枚の石板の上に上下二つに分かれて記されています。
下の文字は石板に直接はめ込まれた砂の文字、少し浮いて白く見えるのは水が文字を形成しています。水が漏れると上の白い文字は消え、水が浸み込むと白く見える仕組みで、この過程が繰り返されます。上の文字がはっきり見えると下の文字は読みづらいです。まさにパリンプセストです。
砂文字の名前は2010年以前に亡くなった方々の名前、水文字の名前は2011年から2016年の間になくなった方々の名前で計300の名前が示されています。サルチェード女史はビデオメッセージでこの作品についての彼女の思いを語っていますが、胸を打つメッセージです。この美術館のホームページでパリンプセストやビデオメッセージを見ることができます。興味のある方、ぜひご覧になってください。(2023年1月)