連邦ガーデンショーで見た墓碑

先月、約半年間にわたってマンハイムで開催されていたドイツ連邦ガーデンショー(Bundesgartenschau 略してBUGA=ブガ) が幕を閉じました。連邦ガーデンショーは州のガーデンショーよりはるかに規模が大きく(ドイツ連邦には16の州があるので当然ですが)、マンハイムの近くにあるハイデルべルクの大学に通う家内の甥っ子から、一日ではすべてを見て回れないと聞いていましたので、最終日にあたふたと駆けつけ、スタンダードな花壇、樹々、野菜園などを素通りして、興味深いものだけを見て回ったのですが、強い印象を受けたのが墓碑でして、折から11月1日はカトリックが主な南ドイツでは万聖節という祭日で、墓参りをするという慣習がありますので今月のコラムはガーデンショーで展示されていた墓碑を取り上げました。
            
会場に出展されていたのはおよそ30~40基ほどだったでしょうか…ガーデンショーですので当然ながら墓そのものより、墓の前に庭師が花をアレンジしたものに重点が置かれているべきなのですが、奇抜な墓に出くわしますと、どうしても花の印象が弱くなってしまいます。

この墓石は石でできた「メビウスの輪」のように見えます。紙で作ったものよりはるかに圧迫があります。「過去と思い出は果てることのない力である」というテキストが記されていました。

こちらの墓碑は、どういうわけか見てすぐに仏壇を想起させてくれたのですが、「愛するものを自由に行かせてやれ。戻ってきたらそれは永久にお前のものとなる」という孔子の箴言があって、やはり東洋思想のスピリチュアルが込められているのだと納得しました。

そして墓よりも強いインパクトを与えるアレンジもありました。至近距離で見ると何なのかよくわからなかったのですが1m離れてみると蜘蛛のように見え、さらに距離を置くとミツバチであることが認識できました。墓碑には養蜂家ではなく「ミツバチの友」とあります。養蜂家というとどうもミツバチを搾取する人間というイメージがありますが、「ミツバチの友」とすると悪い印象はありません。

変わったところでは履き潰された靴が墓碑の上に置かれていました。「もう歩き疲れた…」という切ないメッセージを小生は感じ取ったのですが、碑文には『別れというのは、時には海辺で過ごしたある日に靴の中に入り込んだ砂のようなものだ。不快で憂鬱になるが美しさに満ちた思い出だ』とあり、小生が受けた印象とは全く違います。

面積的に一番大きかったのは次の墓でした。これくらいの大きさなら庭師もその技量を十分発揮できるのでしょうが、なんだか物足りなかったです。墓碑には「我々の元を去る者はいない。少し先を歩んでいるだけだ」とあります。

今回のBUGAでは墓地だけではなく、環境問題、太陽エネルギー、薬草など、いろんな角度からアクチュアルなテーマを取り上げていて、見る価値は十分ありました。次のコラムで、これらについて記したいと思います。(2023年11月)